あらすじ・解説
解説:allcinema(外部リンク)
作品レビュー(1件)
- タダラフィル
4.0点
「眠り姫」で人の姿を消して、会話の声だけ(会話をしている人たちの姿はなく、レストランのテーブル・椅子や、教員室の机だけという映像だけがスクリーン上に映されていた)の映画を作った七里圭監督が、人の姿は映っているものの会話がまったくない映画を撮っています。それがこの「ホッテントットエプロン -スケッチ」です。スクリーンに台詞が映し出されます、「昨日、彼にあざを見られた」。この少女は、一人で住んでいるところに彼が訪れているらしいです。郊外型ファミリーレストランのウエイトレスをしているらしいのですが、その帰り道に川原でクラリネットを吹く、頭にフードをかぶった男を見かけます(ハメルンの笛吹き男ならぬハメルンの笛吹き「ネズミ男」ですね)。彼は段ボールで作った家に住んでいるようですが、彼女がその小さな小屋に入ると、いつのまにか山奥の大きな家に入り込んでいます。ボール紙に壁を覆われたその家の二階には赤い毛糸が無数に吊るされ、その部屋には球体関節人形が転がっているのですが、その人形には左の鼠径部(ここにも「ネズミ」が出てきますね)には不整形のあざがあって・・。一方、山奥の草原にはあざと同じような形の模様をもつホルスタイン牛がいて・・・。 このあと、少女が球体関節人形と戯れるのですが、このあたりは高校生の8mm映画と同じで見ているこちらが気恥ずかしくなってしまいます。 話をどうもっていくのかな・・と思っていたのですが、途中に何度も挿入されていたシーンに呼応したラストシーンになりました。 一種の「不思議の国のアリス」譚であり、ウサギのかわりにネズミ男がアリスを不思議の国に導くわけです。 「眠り姫」と同じく、映像と音楽がそれぞれ素晴らしく、またそれぞれが調和しています。不満があるとすると、牛のいる草原の色が普通の草むらなので色彩に乏しく、ちょっと小汚い。どうせ、色彩に凝るのならもっときれいなところに牛をおいてもらいたかったな。 私が見た時には、この映画の後に、七里圭監督が登場して、短編「夢で会えたら」の紹介をしていましたが、その短編では、会話をする映像は映されていたものの声はなく、会話の他の音のみが拾われており、なるほど、これを一歩進めたのが「ホッテントットエプロン -スケッチ」なのだなと思いました。夢とも現実とも、そして誰の夢なのかもわからないといったところも「ホッテントットエプロン -スケッチ」に引き継がれたのでしょう。 「眠り姫」「ホッテントットエプロン -スケッチ」ともあまり多くの人には受けないでしょうが、DVD化を期待するところです。
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