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KAMATAKI -窯焚-
2008年2月23日公開

KAMATAKI -窯焚-

KAMATAKI

- 2008年2月23日公開

riv********

4.0

青年と壮年の瞳。

 冒頭、しょっぱなに映るモントリオール市街地の風景を見たことがある。あの景色、実は「旧モントリオール市街」という地区も混じっている。 家族がモントリオールに暮らしているため、あの場所を訪れたことがあるのだ。 カナダは日本と比べれば歴史こそ浅いものの、中々複雑な事情を背負っている。 「人種のモザイク」と呼ばれ、人種を問わず、様々な国の人々が住んでいる。 とりわけ、ケンが住んでいたモントリオールは事情の入り組んだ地域だ。 この地区は公用語がフランス語と英語である。 その昔、フランスとイギリスの領土争いがあり、実に、住民の9割がフランス系であるにもかかわらず、イギリス領となってしまったのだ。 その後、モントリオールは、独自の文化形態を守り、今日まで来ている。 現在もカナダからの独立を目指しており、過去何度か、市長が勝手に独立宣言をしてしまうなどの事件も起こっている。 …いくらか間違ってるかもしれない。 が、こういう背景を知っていると、深読みせずにはいられない。 父を亡くし、不安定なケンの存在は、そのままケベック州、モントリオールの現状を思わせる。 ケンに性に対する柔らかさ、を取り戻させるのがアメリカ人女性、というのも面白い。 もう一人、功利主義的な手法を琢磨に伝授しにくるのもまたアメリカ人男性だ。 (ちなみに、カナダ人は、同じ北米大陸にあるというだけで、アメリカと同一視されることを嫌がる。これはどこの国も同じことが言えるが。また、ブッシュが再選した際にアメリカ人が大挙して移民したのもカナダである。) 琢磨の描写に移ろう。 彼は日本人にしては稀有な人物に映ったのは私だけだろうか? どっしりと構え、異国の人々を受け入れ、泰然自若とした構えを崩さずない。 それでいて、窯焚に対する真摯な愛情は、厳粛そのものだ。 あれだけの度量と、鋭さを一つの体に共存させている事が、不思議だった。 極めて優れたバランス感覚を持っているということなのだろう。 自分のことでいっぱいいっぱいのケンからすれば「なんだこのオッサン」ともなるだろうが、人生を楽しむ者の姿など、苦しむ者の目から見ればそんなものかもしれない。 彼らの暮らす工房一体の家は、山奥にある。幽玄な景色は美しさも感じさせるが、同時に、不慣れな者を拒む厳しさも持ち合わせている。一見、柔和に見え、奥底の知れぬ琢磨の描写とも被る。 水を汲みに行く意味。琢磨という人物の重層部分。窯焚。女性。 全てが象徴的であり、美しいイメージが、個々に絡まり、一つのぼんやりとした炎のように、穏やかに揺らいでいる。 琢磨の豊かな父性は、ケンに「健やかな心」を取り戻させようとする。 職人らしい気質で、さして取り入ることもなく、彼の心に薪をくべる事だけをする。 これを単館上映にしておくのはもったいない。

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