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ダークナイト (2008)

THE DARK KNIGHT

監督
クリストファー・ノーラン
  • みたいムービー 1,440
  • みたログ 1.4万

4.39 / 評価:7,262件

テーマは個人と集団、そこでの人間性

  • Y さん
  • 2019年10月12日 15時55分
  • 閲覧数 1932
  • 役立ち度 9
    • 総合評価
    • ★★★★★

ここ近年で見た中で、最高の映画。
2時間30分もあるが、まったく無駄がない。


表面的に見れば「逮捕したのに逃げられて」を
何度も繰り返しているだけのようにも見える。
だけどこの映画の肝は、
人の倫理・規範・秩序に従わなきゃという面と、
とはいえ誰しもそこから外れてしまう個人的感情がある、
という、普遍的な人間性の話。
テーマは悪vs善でも、バットマンvsジョーカーでもない。
ここが好みにマッチしなければ、駄作に見えると思う。
バットマンと名前がつくと、勧善懲悪アクションを連想されるので、
認知力が落ちても”ダークナイト”という題名にしたのは、
製作者の気持ちが表れているようにも思える。

社会の規範がベースとしてあるので
政治、警察、検事、判事などの基礎知識が必要。
個としての悪人を処分すればいいのではなく、
人の集団をどういう方向に向かわせたいのかという、
政治的な信念の話。
なぜバットマンは頑なにジョーカーを殺さないのか、
ひき殺せたのに叫びながらも避けたのか、
あの葛藤も、多くの子供には理解できないかも。
なぜ雑魚は殺しても構わないのに、悪の象徴であるジョーカーは殺せないのか。
多くの人にとってどう捉えられるのかが重要ってところは、
政治や統治のあり方に繋がっている。
歳をとった後で見ると、面白さがじわじわ来ると思う。

この映画は、個々の登場人物達の思いが理解できないと
見ていて面白くないでしょう。
逆に、そこに集中して見ると、珠玉の映画となる。



■バットマン
警察ができない方法で悪者退治していたが
対処できないジョーカーが現れ、
一部信念を曲げざるを得なくなる(=盗聴)
秩序のためとはいえ、法を犯しているし、疲労困憊なので、
本来の正しいありかた(=ハービー)にバトンタッチし
引退しようとするも、ハービーが闇落ちしたため現役続行。
犠牲を出そうが、人々の倫理観を信じ、集団の意思による平和を諦めない。

■ジョーカー
規範の下では生きられないはぐれ者。
社会不適合者から見ると、規範社会は不平等。
混沌こそが公平であり、ゆえに混沌にこそ生きがいを求める人。
なので統制へと導くバットマン達の行動を、何度も何度も邪魔する。
バットマン(=不法者が、賄賂や暴力や金で対処できない相手)がいるからこそ、それに対抗できるジョーカー(=金や利己で動かない。人の心理を逆手に取って動く)も必要とされる。
だからバットマンを殺さない。
倫理や規範で動く人は嘘つきで、人の本能はみな同じ、
”一般人”を身にまとう人も、そのへんのチンピラ同様
追いつめられたら利己で動くもんでしょ、と信じている。

■ハービー
映画のテーマの体現者。
倫理観と本能、両面を表した人の象徴。
見ていて「浅い奴だ」と思われるかもしれないけど、
テーマ上そういう役回りだから、嫌われても仕方がない。
両面表のコイン(=良い道は自分で引き寄せる)が、
途中で普通のコイン(=良いも悪いもみな平等)に代わる演出とか、
渋い演出だと思う。



三者の役回りが綺麗にわかれているし、
信念に対する行動も整理されている。
よく映画には「なんでこのキャラがこんな行動するんだ?」と、
制作都合で整合性合わないシーンが見受けられるけど、
この映画は徹底して整理されている。
なので引っかかる点が少なく、全編通して気持ちよく見れる。

この映画は「勧善懲悪」ではなく、
1人の人間としての「倫理」と「本能」との話であり、
集団の人間としての「規範社会についていける人」と「こぼれ落ちるマイノリティー」の話。
公平性とはなんぞや、の話。
最後のフェリーで、「多数決をとったけど感情により実行しなかった」ってのも、規範と感情の対比が表された良いシーンだと思う。
それまでのハービーの流れで「人は個人感情に流されるものでしょ」に対する対比にもなっており、2重の対比表現にもなっていた。


また、随所にバットモービルやバイク、マントでの滑空、
闇に紛れて突然現れる姿など、
子供心を刺激する味付けも、ちょうどいい具合に効いている。
アクションシーンも、視聴者受けを狙って多用しがちになるところ
控え目に済ませて、本編テーマを邪魔していない。


野暮な説明を省き、テーマを終始一貫した、とても良い映画だと思う。
仕事で管理職に就くような歳になり、集団を動かすために試行錯誤したり、
上司や客のお偉いさんなどへの”印象”だけで物事が動く様を経験したり、
個々の捉え方次第で集団行動の方向性が決まってしまったり、
そんな経験をした後で見ると、色々思うところが出てくるかも。
1年後に見た時、また違う視点で見れるかもしれない映画だと思った。

とにかく最高な映画です。

詳細評価

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