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チャーリー・ウィルソンズ・ウォー
2008年5月17日公開

チャーリー・ウィルソンズ・ウォー

CHARLIE WILSON'S WAR

1012008年5月17日公開

yut********

4.0

チャーリーの目に影が見えた

   1979年 ソ連のアフガン侵攻。 この件では、モスクワオリンピックのボイコットくらいしか、記憶に残っていませんでした。 アフガンからのソ連撤退に貢献したとされる、陰の功労者としてチャーリーが表彰される冒頭。 いきなり、感動的に、ヒーローを讃えるシーンかと、面喰ってしまいそうですが、 ラストで、同じシーンを見たときに、どう思われるでしょう………。   玩具爆弾を拾ったために、手を失った子供たちや、 ソ連のヘリによる攻撃、 膨大な数の難民たち……。 そんな光景は、まず、”戦争反対“の思いだけで、ソ連の撤退を図りたいと思わせるでしょう。  しかし、 そこには、冷戦下という“政治”問題と、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教という“宗教”問題が、 国レベルでも、チャーリーの個人のレベルでも、立ちはだかっていて、 さらには、“資金”の問題も絡んだ複雑な面を、見せています。 策略と、建て前と、陰謀が、張り巡らされているのです。   それは、予告編の気楽さからは予想できないような、 現実の厳しさでもあり、トム・ハンクス演じる、酒と女が大好きな、 ひょうひょうとしたチャーリーの雰囲気が、実は、日々、何も知らずに過ごしている、私たちの日常と、重なるのかもしれません。 そして、そんな日常とは、裏腹に、 同時刻に、どこかで、戦争という暗雲が、立ち込めていることに 気づかされるようでもありました。    結果的に、ソ連が撤退し、めでたく終わったかに見えますが、 パキスタンとアフガニスタンを混同しているような相手に、アフガンの復興について、問答しているチャーリーは、“ある懸念”を残していることに気づいていました……。   フィリップ・シーモア・ホフマン演じるCIA諜報員が、 『人間万事・塞翁が馬』の故事を、チャーリーに話すシーンも暗示的です。 その時は、良かったとしても、長い目でみれば良いか悪いかは、わからないと……。 (作品では、触れませんが、その後の“9・11”という、 アメリカとアフガニスタンとの関係悪化を示唆しているようでもあります。)     劇中、パリ社交界の花『マダムX』の絵を模したセレブ=ジョアンの肖像画がありました。 ジュリア・ロバーツが演じたジョアンは、さすがに、 存在感があり、華がありました。   確かに、破天荒で、奇跡的なことを、チャーリーはしたと思います。 しかし、  この実話が、サクセスストーリーや、ハッピーエンドではなく、 懸念を残したチャーリーの“戦争”が、今なお、続いているのかもしれないと思ったとき、  表彰式でのチャーリーの目に、影があるように見えたのは 気のせいではないと思いました………。      「最後にしくじってしまった……。」 この言葉が、重く残りつつ、 しくじったのは、はたして最後だけだったのか?……とも思うかもしれません。     予告編の”お気楽さ”の理由は、わかりませんが、 予告編から、軽く入って、 重い物を引きずって、出てくるような印象を受けた作品でした。    

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