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夕映え少女
2008年1月26日公開

夕映え少女

1002008年1月26日公開

dav********

3.0

難解?いや、制作側の消化不足かと。

芸大映像研究科の大学院生4人による、川端康成マイナー作品を映画化したオムニバス企画。役者は今後の活躍が多いに期待出来る若手ばかりでかなり注目していました。が、ちょっと取り上げた題材が難しすぎたようです。ただし、難解な映画というよりも、監督や脚本家など製作陣がちゃんと自分の中で消化しきれずに焦点がぼやけた感です。 1本目の「イタリアの歌」は『転々』のふふみ、『紀子の食卓』の主演でもすっかりおなじみになった実力派、吉高由里子を持ってしても、彼女が演じる女助手の心中がこちら側にはほとんど伝わらなかったです。終盤の展開はまずまずだっただけにもうちょっと工夫できなかったのでしょうか。これって、吉高のせいではないと思います。あらすじには「一人で生き抜く決意を固める」とありますが、それを示すものはなにもありませんでした。おそらくこれをどう見せればいいか、制作側は決めかねたまま撮影に入ったのではと思えてなりません。ちゃんと波の高低絵をつけないと。なにいも吉高だけに張りついて撮っていればいいってもんじゃないでしょ。次の作品を見れば分かる通り、例えば彼女の担当看護士さん。彼女のリアクションの変化をもっと効果的に使うだけでもぜんぜん違ったと思いますがどうでしょう。あの女優さんもかなり演技上手でしたよ?(★★) 2本目の「むすめごころ」は高橋真唯・山田麻衣子・柏原収史による三角関係もの。これがダントツの出来。こちらも3人の静かながらもめまぐるしく変化する三角関係のバランスの傾き変化をドンピシャに表現できた傑作です。1本目とちがって、こちらでは様々な小物(形勢逆転を自転車の倒れることで表現するなど)のインサートをうまく使ってこの力関係の変化を表現しています。なんといっても無音を効果的に使っているという私の一番のツボをついた作風に◎を献上。ラストだけ謎ですが、あえてそういったシーンを入れることでその後の3人を観客に適度に考えさせています。その分量・さじ加減もセンスあります。役者のうまさも他の3作とはアタマ一つ抜けている印象ですね。やはり高橋真唯もすごいですが、これに負けていない山田麻衣子さん、今後ちょっと注目したいです。(★★★★★) 3本目の「浅草の姉妹」は浅草・吉原周辺の女郎3姉妹のドタバタを普通に描いています。決して悪くはないと思いますが、でも「だからなに?」。エンターテインメントを狙ったのならそれもアリだとは思うけど、それに徹し切れてもいないし、すごく中途半端な感じです。プロットはすごくいいと思うし、題材的にも一番一般受けしそうなのに、すごくもったいないです。尺が足りなかったのかもしれませんが、脚本の見直しが必要でしょう。役者もちょっとイマイチかなぁ。波瑠という女優さんは立ち回りはすごくうまいけど、セリフ回しに難がありますね。もう一段の成長が必要そう。(★★☆) ラストの「夕映え少女」もかなり難解。キーとなる少女の絵の扱いが軽すぎます。「なんでこれがここにあるんだ?」このセリフだけで済ませちゃダメでしょう。瀬沼(田口トモロヲ)があの絵が少年の部屋にあった意味にt気付いてからの展開やテンポはすごくよかったのですが、それまでの背景の描き方があまりに不足しすぎるし、その割りに余計な合成映像など意味不明な演出には閉口ものでした。撮り方一つでもっともっといい作品になったはずなのに。ちゃんと演じ切った役者に謝れ、と言いたいです。(★★) 難解であることと消化不足で手探りの制作というのは全く別物です。映画を撮る前にまず、制作側がちゃんと読み込んで自分のものにして、きちんと他人に伝えられるようにしておいてください。それができていたのは「むすめごころ」の瀬田なつき監督と脚本の菅野あゆみさん(「浅草の姉妹」も担当)だけでした。他の人たちは彼女たちを見習ってください。厳しいことを書きましたが、いつかまた同じ作品に挑戦してまた見せてください。今よりもずっといいものができているようになることをお祈りします。多分できるはずですから。 (なお、各作品の評価は上記それぞれのレビューの末尾につけておきました。ご参考になれば。)

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