何かを始めるのに遅すぎるということはない
- bar***** さん
- 2019年5月4日 18時41分
- 閲覧数 405
- 役立ち度 0
- 総合評価
マルタのやさしい刺繍。
年老いた主人公が、長年の夢だったランジェリーショップを開くという筋書き。舞台はスイスの小さな村。丁寧なカメラワークと感情表現で、堅実な映画だという印象を受ける。
ハートウォーミングな筋書きと、役者の魅力でいい映画になっている。
この映画で語られていることは、「何かを始めるのに遅すぎるなんていうことはない」ということと「好きなことをやれば、それが生きがいになって活力が生まれる」ということ。
こういったテーマに絞ったことが功を奏して、コンパクトで素朴な映画に仕上がっている。これは構成の技術の高さを示すもので、観る人に堅実で分かりやすい楽しみを与えることができる。
ただ欠点がないというわけではない。それが人間模様で、あまりにキャラクターが簡単なものになっていることから、展開の予想がついてしまう。それだけでない、教科書的なキャラクター同士なので作品の根幹部分にあるテーマの取り扱い方法も、きわめて教科書的なもの、退屈なもの、独創性の欠けたものになってしまった。
ランジェリーショップを田舎町に年寄りが開くというのだから、反発が来るのは当たり前だが、それは誰もが予想できることなので、そのまま映画の中で時間をかけてその場面を描いたところで、視聴者になんの感想も抱かせない。それはまさしく予想通りすぎる展開だ。だからここでひとひねりを差し込まねばいけない。しかしこの映画はそうしない。物語が後半に差し掛かったところで、お約束の展開を時間をかけて見せるのは、明らかな設計ミスだ。
そうすると、締めくくりの感動も、完全に予定されたようなものに見え、心は動かされない。せっかく丁寧な場面演出があるのに、人間模様でおおざっぱになっている。とても残念。
しかし基礎的な技術は高く、ほかの凡作とは比べ物にならないほど上手だ。カメラワーク、映画内の時間の動き、登場人物の動かし方、物の配置、どれほど上手かよく見てほしい。
詳細評価
イメージワード
- かわいい