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レッドクリフ Part I
2008年11月1日公開

レッドクリフ Part I

RED CLIFF: PART I/赤壁

1452008年11月1日公開

一人旅

3.0

東アジアの才覚が結集した歴史スペクタクル

ジョン・ウー監督作。 中国・三国時代を舞台に、蜀・呉連合軍と曹操率いる魏の対決を描いた歴史スペクタクル。 中国明代の歴史小説「三国志演義」を基に三国時代において最も名の知れた戦いの一つである「赤壁の戦い(西暦208年)」を、魏・呉・蜀の3つの視点を交錯させながら映像化した歴史スペクタクルの前編で、監督は『男たちの挽歌』のジョン・ウー。蜀の軍師・諸葛孔明役で金城武、呉の総司令官・周瑜役でトニー・レオンが出演している他、周瑜の妻・小喬役でリン・チーリン、孫権の妹・孫尚香役でヴィッキー・チャオがキャスティングされるなど東アジア各国の俳優が結集しています。 前編となるPartIでは、魏・呉・蜀それぞれの主君や武将を紹介しつつ、蜀・呉の連合軍結成~赤壁の戦い直前までが描かれています。私はKOEIから発売された「三國無双」シリーズに中学時代の青春を捧げた世代でもありますし、吉川英治の「三国志」を全巻読むほど熱中していた記憶がありますから、「赤壁の戦い」というワードにはずいぶん馴染みがあります。やはり本作も小説同様悪玉は魏の曹操で善玉が蜀の劉備という定番の設定ですが、本作の劉備は“聡明”なイメージとは異なり若干“愚鈍”な君主に見えます。というのも、本作の主人公は諸葛孔明と周瑜の軍師コンビであり、二人が主体となってお話が進むため(二人の出会いが蜀呉同盟を実現させた)、君主の孫権や特に劉備は存在感が薄く空気的扱いに近いです。蜀の関羽や張飛はイメージ通りのキャラクターですが、たった一人で何人もの敵兵をなぎ倒したり、人間離れしたとんでもない怪力を披露するなど能力がチート級で、こうした描写には武侠映画におけるファンタジー混じりのアクションが取り入れられています。 あくまで本作は前編であり赤壁の最終決戦直前に幕切れを迎えてしまいますが、諸葛孔明と周瑜が古琴の演奏を通じて意思を疎通する場面や、兄・孫策に対して劣等感を抱く孫権が虎狩りを通じて曹操打倒への闘志を燃やす場面、さらには周瑜と妻・小喬の深い愛情と、呉を支配して小喬を我が物にしようとする曹操の欲望など各登場人物のキャラクターを深く掘り下げた作劇になっていて、戦い以外の歴史群像ドラマとしての見所も数多いです。ただ、肝心の戦いの描写がやや冗長なのが玉に瑕であります。CGによって大軍の陣形を俯瞰的に見せるシーンはダイナミックで迫力充分なのですが、少人数対少人数の殺陣描写が端的に言ってキレが悪い。兵士の動きが緩慢で演技臭く、戦いの凄惨さがいまいち伝わってこないのです。上空からの大軍の表現にはCGを上手く活用していますが、クローズアップされた白兵戦では生身のエキストラを総動員しているので一人ひとりに完璧な動きを求めるのも酷な話なのかもしれません。

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