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リダクテッド 真実の価値 (2007)

REDACTED

監督
ブライアン・デ・パルマ
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  • みたログ 320

3.26 / 評価:123件

悪と偽善を描くデ・パルマに怒られちゃった

  • alan smithee さん
  • 2009年9月6日 2時51分
  • 閲覧数 218
  • 役立ち度 6
    • 総合評価
    • ★★★★★

 ブライアン・デ・パルマと言えば、巧みに加工した映像表現を堪能させてくれる映画監督というイメージがある。
 確かに《悪魔のシスター》や《ファントム・オブ・パラダイス》でみせた画面分割や《キャリー》や《フューリー》の長廻しのスローモーションなど、その技巧が目を引くのは確かだ。
 でも、だからと言って、デ・パルマを科学者のように冷徹な目で現象を観察するだけの映像作家のようにとらえたら、それはちょっと違うと思う。
 なぜなら、デ・パルマがそれらの技巧に拘るのは、人間の心理描写やエモーショナルに展開する物語は、“映像は視覚的言語”であるという映画の定理にもとづき表現されるべきだという映像作家としての確固たる信念故のことなのだから、だ。
 即ち、デ・パルマが描きたいのは、そして拘りたいのは、とりもなおさず人間であり、その人間から派生する様々なドラマなのであって、それを描き出す手法として、様々な技巧を駆使しているということだ。

 そう考えれば、技巧派のデ・パルマが、ドキュメンタリー仕立ての《リダクテッド・真実の価値》を製作した真意も分かるというもの。
 正直はじめは、映像的技巧を封印せざる得ない構成を持つ本作を何だってデ・パルマが手掛けるのか、と疑問だったんだけど、いざ観たら納得がいった。
 
 正に人間を描く映画。
 人間の心の闇を徹底的に描ききることを目的とした映画。

 以前《カジュアリティーズ》で、ベトナム戦争下における非人道的な人間の姿を【善】と【悪】の対比で描いたデ・パルマだが、イラク戦争を描いた本作で描くのは【悪】と【偽善】。
 戦況下で発生したレイプ殺人事件の主犯が【悪】なれば、その行為を制止することも出来なかったくせに帰還後に戦争の悲惨さを語り聴衆の拍手喝采を浴びて悦に入る兵士や、事実を隠蔽しようと躍起になる軍法会議のお粗末さは限りなく【悪】に近い【偽善】だ。

 そして、デ・パルマはそんな戦争を報道し続けるマスコミに対しても容赦なく怒りをぶつける。
 映像作家になりたいがために戦地で始終カメラを廻し続け、興味本位でレイプ殺人事件をも撮影した兵士は、敵兵に拉致され斬首される。

 劇中登場するドキュメンタリー仕立ての映像はネットの【You Tube】なんかで観たことのあるようなデジャブーに駆られるようなものばかり。

 そう。デ・パルマは人間を描き続ける映像作家であると同時に、己の胸の内の怒りを映像に叩きつける孤高の映像作家でもあり、その怒りの矛先は戦争当事者のみならず、マスコミや戦争を“対岸の火事”のようにネットで眺め続ける我々にも向けているのだ。

 

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 悲しい
  • 恐怖
  • 知的
  • 絶望的
  • 切ない
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