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非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎
2008年3月29日公開

非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎

IN THE REALMS OF THE UNREAL/IN THE REALMS OF THE UNREAL: THE MYSTERY OF HENRY DARGER

822008年3月29日公開

ivo********

4.0

ネタバレ常識の王国から

先日『マーウェン』を観て、なぜかヘンリーダーガーのことを思い出し、予てから本作の存在を知りながら観ていなかったため、鑑賞。 数年前、ラフォーレ原宿の上で、原画展を観たことがある。 その時は、素描が中心だったこともあり、「期待してたほどではなかった」という思いが残ってしまったのだが。。。本作で、ネット上や美術雑誌などでも観たことがなかった彼の(彩色の)作品がたくさん観られて、そこは良かった。 ヘンリーダーガーの生き方は、僕自身にとっては他人事ではない。ここは自分の話をすべきところではないのでそれ以上は書かないが。 様々な技法を生み出す過程、信仰との葛藤、ゴミ箱からでも新聞を集めて全紙をくまなく読む勉強家であったことなど、興味深かった。 ただ、他のレビュアーの批判で、「ダーガーのことは好きだが、この映画自体はたいして面白くもない」という意見が散見されるが、それはもっともな話でもある。 H.R.ギーガーのドキュメンタリー映画についても同じことを書いたが、それは監督が女性であることが大きな要因だと感じる。 つまり、ダーガーが本当に心の中で描いていた物語世界の壮大さ、精緻さと、この映画の監督が受け止めた作品の印象とのギャップである。彼の作品を可愛らしくアニメ化したことは悪いとは思わないが、その世界観を素朴でファンシーなものとして決めつけるのは、表面的すぎるのではないか?とも感じる。 本人はそんなつもりで描いたのではない!ということだけは、僕には断言できる。 そして、彼の変人ぶりを、あくまで常識人の視点から語る面が多すぎるのが、ダーガー自身に感情移入している人間からすると違和感があるし、言いようのない寂しさを感じる。 つまり、女性の中にはたまに、一つことに夢中になる男の生き方に興味を持つ人はいるのだが、結局はその世界の中に深く入っていくことはできず、それを端から見ることしかできないのだ。それはミソジニーではなく、事実である。 そして、女性視点、常識の王国からのロングショットで彼を眺めるから、当然それは寂しいものに映らざるを得ない。 自分にとって価値ある美しいものを、自分の手で作り出すことをせず、商品として手に入れ、消費していくというやり方でしか満足感を得られない『常識の王国』の方が幸せである、と誰が決めたのだろうか? 他にはない特別なものを作り上げたのに、それを特別でもなんでもない常識人たちから広く浅く認めてもらうこと、そこにどれほどの価値があるのだろうか?

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