悪をソフトランディングに制しようとする善
- yab***** さん
- 2019年3月14日 22時59分
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ロンドンにあるロシア料理のレストラン。ロシア民謡が歌われ普通のレストランとしか思えない。
しかし、裏の顔はオーナーがロシアンマフイアのボス。そしてボスの庇護のもと放蕩を繰り返す息子。そして、彼らの運転手として雇われた男。彼らは人買いによる売春業を資金源としていた。
その一人の女性が、出産による失血で死に、その助産士が彼女の日記を拾ったところから、ストーリーは展開していく。一般人が超えてはならないギャングの世界に入りこんでしまったのだ。
助産士を演じるのはナオミ・ワッツ。マフイア側の運転士を演じるのはヴィゴ・モーテンセン。”こちら側”の人間ナオミ・ワッツと、”あちら側”の人間ヴィゴ・モーテンセンの奇妙な交流により、作品は適度な緊張感を帯びていく。
デヴィッド・クローネンバーグ監督らしいグロテスクなシーンは健在だ。首を切って切り口から血が噴き出すシーンが2ヶ所。死体の指を切るシーン。ヴィゴ・モーテンセンが風呂場で真っ裸で敵と苦闘するシーン。どれも目を覆いたくなるようなシーンだ。
しかし、この作品はいつものクローネンバーグのトーンとは違う。ナオミ・ワッツを含めた家族、そして産み落とされた赤ん坊を通して、悪をソフトランディングに制しようとする善が、とても穏やかに浸透していくのだ。
その善には希望の光が見え隠れするのだ。それは、最後まで表情一つ変えないヴィゴ・モーテンセン役の男の美学として昇華されていく。
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