寓話性に富んだ現代の童話
- motekiyo さん
- 2010年8月24日 7時56分
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この映画、日経新聞で五つ星だったことと、チャウ・シンチー監督が、「子供に見てもらうために作った」と言っていたので、ずっと気になっていて、ようやく、小学3年、小学1年の2人の子供と鑑賞しました。
全く何の問題も無く安心して一緒に楽しめました。間違いなく子供の情操教育上、無害かつ有益です。これは太鼓判。「カンフー・ハッスル」や「ミッション・インポッシブル2」などのパロディーが、子供たちには意味不明でしょうが、まあ、無問題でしょう。「MI-2」なんてパロディーにするにはもう古いんですが、逆にそれがチャウ・シンチー監督のジョン・ウー監督への思いとして伝わってきます。中国映画人としての誇りですね。
この物語で繰り返し説かれるのが、「嘘はつくな、暴力はいけない、他人の物を盗むな、真面目に勉強しろ」といった道徳観。これ、当たり前すぎて陳腐なはずなんですが、なぜか心に響きました。拝金主義と享楽の社会で育った子供たちは、「大企業の社長」や、「ハリウッド・スター」になりたいと願い、「清貧」を説く主人公ディッキーを馬鹿にしていじめるのです。貧乏人と金持ちの対比、これはまるで今の中国の縮図のようです。経済発展が目覚しい中国ですが、他方、貧しい家庭はまだまだ沢山あります。豊かな生活に慣れきっていると、この父子の暮らしが戯画化された「ありえね~」暮らしに思えるけれど、このような生活を強いられている人達は現在も実際にいるし、日本だって、戦後復興の頃の暮らしぶりはそうでした。また、チャウ・シンチー自身も、経済的理由から進学をあきらめています。「しっかり勉強しろよ」と、風になったミラクル7号が、窓辺のノートを揺らし、鉛筆を転がすシーンは泣けたなぁ。
「清く正しく美しく」という当たり前なテーマが、ここまで新鮮に響くのはナゼでしょう?いつから「道徳観」が当たり前でなくなったのでしょう?カネと嘘と欺瞞にまみれた大人たちから子供達を救い出せ!チャウ・シンチー監督はそんな思いで「ミラクル7号」を大人と子供が一緒に楽しめる作品として送り出したような気がしてならないのです。これは、寓話性に富んだ現代の童話です。お子さんと是非!
あと、ディッキー役の子供は、女の子だったんですね。びっくりしました。
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