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ミスト
2008年5月10日公開

ミスト

THE MIST

R15+1252008年5月10日公開

tis********

5.0

「霧」が覆う人という心。

ラストには絶対に納得できない。 なのに涙がでた。 私の頭の中は霧で包まれ、思考することすらできない状態だった。 映画という枠の中に閉じ込め、 そして嫌というほど「人間」を見せられた。 極限状態に追い込み、視界を奪う。 奪うのは、10cm先の世界。 見る事を奪われるとたとえそれが暗闇でなくとも、人は人である事を見せ始める。 泣く。 怒る。 おびえる。 負の感情すべてがここに表れる。 普段は笑顔というベールに包まれた変人を見るその冷静な目すら奪う。 もはやそこに人間は存在しない。 謎の恐怖よりも、一分先の心の変化を恐れるのだ。 パニックホラーや人がむやみに死に、幸せな感覚を得られない映画を避けている。 私はそういった映画をあえて観ないのかも知れない。 そのあまりにも露骨な人間の表現が怖いのか、若しくは自分がそうあるのではという恐怖かも知れない。 泣かせるヒューマンドラマから人に優しくしようなどという心をもらうことがある。 そう思う事が自分にとっての成長だと思っているのかもしれない。 今回この映画で、その逆を完全に打ち抜かれ、自分の中に果たしてこの映画を肯定できる存在があるのか、もしくは全く受け入れない偽善の私が現れるのか。 なんとも恐ろしい映画だ。 映画という枠の中にあるからこそ、私は劇場をさり、現実にもどることができる。 しかし、こうもまざまざと人の世界を浴びせられるとなんとも息苦しいものだ。 霧は恐怖を運び、狂気を生んだ。 狂気を正義とすることで、恐怖を免れようとすがる人々。 愛する人を守る為には自分を見失わない事だと知っていた男。 その先にある未来を考えればその選択は間違いではない。 しかし、そこに共感できない、もがき、醜くとも命ある限りと思う自分がいた。 そう思う私は、本当に未来を見ているのだろうか。 霧が奪った10cm先の未来。 せめて10cm、いや、一秒先が見える視界があれば・・・・。 ホラー映画?パニック映画? そういう先入観で見ていた。 この映画は立派な、いやあまりにもリアルな人間ドラマであった。 襲い掛かる恐怖、晴れて欲しい疑問・・・・ 「共感できない」と思わせる世界に満点を。 怖さよりも切なさが残った。 流れた涙は悲しさではない。 彼がその恐怖に負けた悔しさだった。

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