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神様のパズル
2008年6月7日公開

神様のパズル

1342008年6月7日公開

zin********

5.0

見よ!サイエンス物のお手本の様な快作だ!

原作の魅力を、きっちり形にし、 かつ“自分達の色”に、見事に改変している。 原作ものの映画化かくあるべし。 さすが、 三池×NAKA雅MURA(脚本)の、気心知れたコンビ。 この小難しくも爽やかな原作に、一筋のおバカさを加え、 見事な娯楽作に仕上げた。 話は、物理学用語のオンパレード。 そりゃそうだ。 宇宙の誕生を理論化する所から、話はスタートする。 小難しくて退屈と思われるだろうが、何の。 “超ひも理論”“M理論”等々、 ここまで噛み砕いて見せてくれる。 アホさも加え。 何とそれは、痴話ゲンカの“再現図”と同じレベルで、である。 この豪快さと大胆さに圧倒され…見てしまう。 さて、これで数々の物理理論が判ったかと云うと、 やっぱり判らん。 それで良い。 そんなものが面白い訳がない(失敬)。 例えばSFやファンタジー映画。 それらの膨大な裏設定も、よく判らんものが多い。 設定は、物語の本筋を面白く見せる為の、 舞台裏に過ぎない。 世に有名なファンタジー・SF作も、 見所(面白い所)は、きっちりアクションや、 人間ドラマだったりする。 設定は、それに拡がりのある世界観を載せるスパイスだ。 それをクドクド見せられては興ざめ。 だから今作は、 『宇宙は無から生まれた。なら、もう1度創り出せるか?』 それを、もっともらしく見せる為の、 作者の創造も加えた“ウンチク”と、見跳ばせば良い。 そう観せている。 判らなくても、判らない世界である事が判れば良い。 今作の見所はそんな所じゃない。 原作小説は、 落第生である主人公の日記形式。 だから、物理論もレベルを下げて解説される。 だったら、映画じゃここまでやろう! …それが今回の映画版主人公、綿貫だ。 ミュージシャン志望の、寿司屋のバイトの、 目つきの悪い、片想いに燃え、バリバリアナログな、 物理学とは完全対象な男。 この改変が、 もう1人の主人公ホズミサラカとの、 絶妙な面白さを、次々と創り出して行った。 人工受精により、 天才として生まれるべくして生まれたサラカ。 原作の“穂瑞沙羅華”をカタカナ名にした、芸の細かさ。 サラカは“人とは違う”“責任”を持って生まれた…。 少なくとも、本人はそう思っている。 しかし感情を見せない16歳の少女。 対してハート(だけは)熱き男、綿貫。 そんな2人が互いに、 少しずつ“相手の世界”に興味を持つ様。 これが見所なのだ。 サラサは、 自分に課せられた重圧に苦しんでいる姿を、 とつとつと見せ出す。 『自分を天才と言った事はない!』 憤然と言い切る彼女が痛々しい。 “天才”とは、周りが無責任に付けた“責任感”だと。 綿貫のみに見せる、そんな本音。 こんなものが、我々を映画にドンドン惹き込んでいく。 そうして、2人の織りなすクライマックス! 『何故生まれてきたのか?』 大粒の雨。 サラサの叫び。 それを見過ごす様な男は、ロッカーじゃない。 綿貫は、サラサに欠けているものを、ちゃんと持ってる。 それは時に“直感”であり、“魂”であり“歌”だ。 『生きろ』『感じろ』。 そんな生臭いセリフは、この映画には不要! そんなものが、この物理少女に、 この世界観に浸った我々に届くものか。 だから、あのセリフになった。 あのシチュエーションになった。 シーンに全くそぐわないセリフを投げてよこした。 言葉なんか何でもよいのだ、と如く。 伝えるべきは熱きハート! この見せ方。この感性。 見事である。 ダダをこねる子猫をあやす様な、 不思議なその光景は、逆に全くもって感動的だ。 “よろこびの歌”とベートーベン。 ロック魂と江戸前寿司。 最新粒子加速器と、田んぼ。 いつの間にか、当然の様に“そこにある”マイクスタンド。 こんな不協和なものが、 宇宙創造と云う一大事の中で、 作品の中に混然一体と存在して、違和感なく、 ついにはそんな感性が、クライマックスで爆発する …そんな映画。 様々な批判を受けながらも、 感性のまま作品をぶつけて来た、 三池監督ならではの爆発だ。 これが三池だ。 文句あるか。 サイエンス要素を軽くいなして見せ、 ちょっと変わった主人公達と、 大分大それた、宇宙創造パニックムービー。 ひたすら裏技を使いながらも、見事に人間描写をも描き切り、 後に残るのは、ハートウォーミングさとロックな魂。 そんな計り知れない、奇跡の様な傑作である。 谷村美月の姿体を、きっちり見所にする三池節。 ボツリボツリとしゃべる、市原隼人のハマり方。 インドで、同時進行“青春”していく2役の弟。 世界は生きている。 弟もサラカも生きている。 決して部屋の中だけが、人生ではなく、宇宙ではない。 ロックな心は、1つの“宇宙”に響くのだ。

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