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赤んぼ少女
2008年8月2日公開

赤んぼ少女

1042008年8月2日公開

どらドラゴン

4.0

タマミちゃんの乙女心

最初の『赤んぼ少女』の映像化である『蛇娘と白髪魔』から実に40年ぶりの、そして連載時タイトルでの映画化(本作は単行本化の際『のろいの館』や『赤んぼう少女』と改題されていた)。戦時中に生き別れた両親に15年ぶりに引き取られた(昭和35年設定)薄幸の美少女葉子(主人公)だったが、そこには赤ん坊の容姿のまま成長できない奇形の姉がおり、周囲に不気味な事件が頻発する、という受難物。邪気のなさそーな水沢奈子はいじめられる葉子役に適任(大事にしている薄汚い人形を隠す仕草が可愛い)。やや地味で、楳図ヒロインはもう少し華美なお人形感も欲しい気もするが、時代設定を考慮すると、古風な雰囲気で良いのかも。 原作では人前に出ても「ちょっと気持ち悪い」程度だった赤んぼ少女ことタマミは、とても人前に出れない(西洋ホラー映画のクリーチャー並の)化け物に造形されてしまい、原作と違い言葉を喋らない等、大きく印象が異なる(ラストに一言喋るが、三人殺しといて「御免なさい」かよ)。喋らない設定は山口雄大監督の狙いらしいが、失敗では?孤児院から葉子を引率してくれる役の堀部圭亮は相変わらずハンサムで良い人感が溢れていて好ましいが、酷い殺され方。そもそもこの人が殺される理由がないのだが。 原作での「好きな男の子に少しでも可愛く見られようと、口紅を塗ってみるものの、あまりの不出来に泣いてしまう」というタマミの乙女心はほとんど描かれない(一応口紅シーンはある)。あの容姿で乙女心を持っているのが最も悲しい点だし、タマミの凶行が劣等感と嫉妬を原動力とする原作と違い、獣の条件反射のように襲いかかるのでは、原作の趣旨を汲んでいないのではなかろうか。原作では(美しい妹に対する嫉妬なので)もっと陰湿でネチネチしたいじめ方だったのに、映画では狂犬のように襲いかかるシーンばかり。可愛い娘はもっと逃げるに逃げれない状況にしてジワジワ追い詰める方が絵になるのに。映画でも腕ギロチンにかけるシーンがあったが、原作では「安全装置が付いている」ことを知らせず、恐怖のあまり失神する葉子をあざ笑う陰湿さ。嫉妬からくるイジメはそーでなくっちゃ。 嫉妬のメインとなる葉子のボーイフレンド高也にタマミが恋する描写がないのも痛い(そもそも映画では葉子のボーイフレンドですらない)。さらに高也の「本当に醜いのは容姿ではなく君の心だ」というタマミに対するセリフがないのもいただけない(このセリフこそ、タマミにとって最も聞きたくないセリフだったろう)。そう、本映画では、肝心のタマミの心情が描けていないのだ。ただ、絵本の王子様に憧れるも自分の顔を見て落胆する場面と、硫酸を葉子に浴びせる際にためらった場面ではタマミの心情が垣間見えたが、もっと盛り込むべきだった。 肩から腕を切り落とされた高也が救助活動をするのも無理がある。またハッピーエンドの原作と違い、アンハッピーな終わり方。野口五郎は相変わらずうまいし、タマミを偏愛する終始狂った母親を浅野温子が歪んだ目力で見事に演じていた(ヘビ女に化けそうな異様さビンビン)だけに、色々と残念。とは言え、原作漫画が好きなだけに辛口評価となったが、これまでの楳図映画の中では比較的良作ではないかと思う。

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