4.0点
まず、この映画に限ったことではありませんが、原作のある映画について、原作と比較してどうのこうのという評価の仕方は、総じてやめた方がいいと私は思います。 だって、「原作より映画の方がいい」と言ってる人って、見たことないと思いません? そういう比較をする人は最初から、原作ワールドからちょっとでも逸脱したらそれだけで非難するという人なわけで、そういう人は最初から実写映画化なんぞはご覧にならないことをお勧めします。見ないうちから失望することがわかってるんですから。原作を完全に忠実に実写映像化することなんてありえない以上、どっかで必ず原作ワールドを壊すことになるのは最初からわかってるんですから。 楳図かずおさんや伊藤潤二さんの漫画は、絵柄が不気味なのでホラー漫画に分類されていますが、じつは非常に鋭い人間洞察を含んでいて、ただの恐怖ではない深々とした感銘を残してくれます。 対するにこの映画は、単純明快かつ完全なるグロテスクホラーです。観客に、「怖い」というより「気持ち悪い」思いをさせてやろうという魂胆で作られた映画です。 これは、楳図かずおさんの漫画からは、アイデアを借りただけで、本質はまるで別物の映画です。 で、私はそれでいいと思います。そう割り切って、存分に気持ち悪さを楽しめばそれでいいと思います。気持ち悪いのが嫌いな人は、見なければいいだけの話です。 それにしてもこのキャストやスタッフの豪華さはすごいですね。俳優陣は、ゴールデンタイムのテレビドラマ並だと思います。こんなヲタクでカルトな映画の出演者リストじゃない。 みなさん、遊び心の持主でいらっしゃる。 存分にグロテスクな映像を作るのを、楽しんでいらっしゃる。 そういう心意気が、私は大好きです。 エンドロールの最後に、「長澤つぐみ」「井口昇」って名前が出てくるのは、どういう意味だろう? 画面に映ってるようには見えなかったんだけど、スタッフとして協力してたのかな? 板尾創路さんも、画面だけ見ててもよくわかんなかったけど、多分タクシー運転手役ですかね? ぼーっと見てるとわかんないところで、すごい人たちが協力してるんですね。みんな遊び心の持主さんたちです。 あと余談ですが、冒頭とか随所にオルゴールの子守唄的な音楽が流れるのは、「サスペリア」を連想しました。 タマミの造形は、「フェノミナ」を思い出します。 山口雄大氏はダリオ・アルジェントの世界を作ろうとしたのかな? もしそれが図星なら、その点では失敗してると思います。 ダリオ・アルジェントの世界は、ただグロテスクなだけじゃなくて、美しいです。ダリに似た美の世界がある。 残念ながらこの映画には、美の要素はまったくありません。ひたすら、気持ち悪いです(笑)。