おそろしいほどのリアリティ
- yuki さん
- 2019年6月7日 17時51分
- 閲覧数 308
- 役立ち度 1
- 総合評価
人間描写に定評のあるノア・バームバック監督、本作も「ああ、すげぇわかる!」「こういうやついる!」感がハンパないです。
オープニングからして素晴らしい。電車内で少年が自分の席に戻って「母さんさあ」って話しかけたらぜんぜん知らないひとだった。あとで元の席に戻って笑い話にするけど、しばらくして列車の連結スペースに入って、「ああああああ!」って叫ぶ。まったく同じ覚えがあるので共感度100%です。そんな人間臭い小さなドラマの積み重ねがこの映画を形成しています。
作家のマーゴットは妹ポリーンの結婚式に出席するため、息子クロードを連れて実家に戻る。しかし次第に姉妹の確執が現れ始める。家族の関係が崩れていくさまを生々しく活写したブラックコメディ。といって、アハハと笑えるようなコメディではありません。見ていて嫌な汗が流れてくるのを楽しむコメディだと思います。
ニコール・キッドマン演じるマーゴットがとてもいい味を出しています。常に自分が正しいと思っている人間で、それを「善意」というラッピングで相手に押し付ける傲慢さがとても腹立たしい。表面では笑顔を装いつつ、あとで身内に悪口を言いふらす。黙ってられない気性なんでしょうね。なのに外面は気にするタイプ。この女性、1から10まで本当に私の母親にそっくりでした。
私の母親も、姉家族に合うたびに、あとで私に彼女の悪口を逐一報告してくるようなひとでした。なのでこの映画のテーマは非常に共感が持てました。
もろく崩れやすく、傷つき傷つかされ、でも断ち切ることができない家族という関係性を徹底的に浮き彫りにした映画だと思います。
詳細評価
イメージワード
- 未登録
このレビューは役に立ちましたか?