2008年7月26日公開

敵こそ、我が友 ~戦犯クラウス・バルビーの3つの人生~

MY ENEMY'S ENEMY/MON MEILLEUR ENNEMI

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敵こそ、我が友 ~戦犯クラウス・バルビーの3つの人生~
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作品情報上映スケジュールレビュー

あらすじ・解説

クラウス・バルビーは22歳でナチスの親衛隊に所属し、スパイ活動に従事する。1942年にフランスのリヨンに移った彼はゲシュタポの責任者となり、政治犯を始め多数の人への容赦ない追求から“リヨンの虐殺者”と呼ばれる。やがてドイツが第二次世界大戦に破れると彼は逃亡し、米国陸軍情報部の保護のもと、反共産運動専門の工作員として暗躍する。

シネマトゥデイ(外部リンク)

作品レビュー(28件)

知的21.8%恐怖20.0%絶望的16.4%悲しい14.5%不気味14.5%

  • gar********

    5.0

    国家の欺瞞を鋭く突いたドキュメンタリー

    『リヨンの屠殺者』とよばれた戦犯・クラウス・バルビーの人生から、戦後世界の闇を描いたドキュメンタリー。 クラウス・バルビーという名前を知ったのは、おそらく高校生ぐらいに見たある報道写真集から。穏やかな顔をしてほほ笑む老人を見て、「この人はどういう人だろう?」と興味を持って、写真の解説を見て驚きました。ナチス占領下のリヨンで大勢のユダヤ人(孤児院の子どもたちを含む)を強制収容所に送り、戦後ずっと逃亡し続けた男…その穏やかな姿からは想像もつかない残虐非道な行いに、「何かの間違いではなかろうか?」と思ったほどです。そして、この作品を見たのですがバルビー自身が行ったことのおぞましさと同時に、彼をこれほどまでに長く生かし続けた国々のご都合主義に驚くと同時に、「やっぱりね」と思いました。 第二次世界大戦中は、自由と民主主義を守るという名目で徹底してナチスを倒したアメリカが、ソ連の脅威を受けてナチスの残党を反共の手段として利用する所には、モラルやためらいは全くと言っていいほど感じられません。もちろん、その所業に同意はできませんが最近のサダム・フセインやウサマ・ビンラディンもまた、バルビーと同様に上手く利用され捨てられたという視点で見ると、この64年間世界は同じことを繰り返しているということを特に意識させられます。だからこそ、この映画に出てくるナチハンターのクラルスフェルト夫妻のように、過去の所業を風化させることなく証言を集める人々や自分が経験した苦しみを証言している人々の行動がどれほど尊いものなのかを感じさせてくれます。こういう作品が作られることで、少しでも国家が過ちを犯すことを防ぐ歯止めになると良いと感じました。 そして、もう一つ私に考えさせられたのが、劇中使われていた音楽について。バルビーの南米でのシーンに、フランツ・レハールのオペレッタ『ほほえみの国』から『君こそわが心』(英語名:You Are My Heart's Delight ドイツ語名:Dein ist meine hertz)が使われていたこと。この歌の作詞者であるユダヤ人フリッツ・レーナ=ベーダは、1944年にアウシュビッツで射殺されています。また、作曲したレハールはヒトラーのお気に入りの作曲家であったため本人が政治にまったく関心のない人だったのにも関わらず、戦後ナチス協力者として非難を浴びたようです。あの時代と関わりの深い芸術家の音楽が使われていたので、このドキュメンタリーはかなり私の心に残る作品となりました。 一人の戦犯の人生を通じて、国家の欺瞞を鋭く突いたドキュメンタリーの秀作。日本でもこんな作品が作れる日が来てほしいと思いました。

  • syu********

    5.0

    幅広い世代に観て欲しい作品

    戦後の国際政治裏面史。このドキュメンタリーは、親衛隊バルビーの奇妙な人生を追いながら、何故戦後の世界が彼を必要としたのかを考察する。正義だの悪だのといった建前より重要な、或いはそれを遂行する為に必要な国際社会の裏側を理解する助けになる作品だ。 バルビーのような男を利用してまで行われる世界の勢力争いの構図は、勿論今でも変わらず存在する。それを認識するだけでも、世の中の見方は変わり、簡単に騙されないぞと言う気持ちを持つことができる。定期的にこうした作品を見ることは、国際情勢に興味を持つ人にとって決してマイナスになることはないだろう。 彼が生き抜くのを可能にしたのは、受け入れ先のボリビア政府のみならず、驚くことに米国やバチカンであり、否、各国の思惑が交差する世界政治そのものであった。元ナチス党員の人生から、国家や政府という“得体の知れない”組織の真実を浮かび上がらせた。バルビーの人生を追うことから見えてくる国家の裏の姿、世界の権力構造の実相……。現代社会を理解する為に、幅広い世代に観て欲しい作品です。 バルビーは家庭では、いい父親を演じていたというが、同様にアメリカ政府も、自由と平等の国を演じているのかもしれない。なぜなら、今もアメリカは戦争をし続けているのだから。 66年ボリビアに潜入したチェ・ゲバラは、政府軍に逮捕され処刑されるが、ゲバラたちのゲリラ戦封じをアメリカ陸軍と謀ったのが、バルビーだったという。 バルビー曰く「あなた方全員が私を必要としたのに、裁かれるのは私一人だ。そこに偽善がある。」

  • hxr********

    4.0

    世渡り

    元ナチスの親衛隊で第二次世界大戦の戦犯に問われた男が、 あろうことか戦勝国アメリカのCIA軍事スパイとして暗躍し 果てには南米ボリビアでクーデターを起こし政権を握ろうとする・・・ そんな破天荒な人生を歩んだ クラウス・バルビー の姿を追った ドキュメンタリー作品。 こういう人の存在を知ることだけでも 歴史こぼれ話 として嬉しいし、 映画として取り上げることによって 彼の生き方そのものをドラマ として捉え イーブンな立場で人間模様を楽しめたのはありがたいことだ。 本来なら「実在した人物をもとに・・・」という形で よりエンタテイメント性を強めたドラマとして観た方が 映画としてはアリなのだろうが、 それもあくまでも本当の人となりを知ってからこそのこと。 ひとまずありのままの事実を公表するような形でまとめたことは、 十分に意義のあることだろう。 さて、彼の人生をどう考えるかであるが・・・ 「究極の世渡り上手」といった言葉で片付けるのは簡単かつ早計。 悪いことだとは思いつつも 軍事プロフェッショナル として アメリカが彼を重宝したという事実ありきの話でもあるし、 彼の 果てなき欲望 のようにとらえられるボリビアのくだりも 単純にボリビアという国家そのものの脆弱さが 彼のような存在を必要としていたという側面があるだろう。 いささか乱暴な表現にはあるだろうが・・・ たまたま彼がそういう時代に生まれ、たまたま時代が彼を必要とした。 それだけのことなのかもしれない。 とはいえ単純に、彼がナチスの親衛隊としてなした残虐行為は 決して許されるものではない。 そのあたりの良心の呵責といったものはなかったのか? それでもまた南米で独裁帝国を夢見た彼の真意とは?? そもそも果たして、彼の人生は幸せだったか?? このように、知れば知るほど新たな疑問も増えていく。 そういう面においては、もうちょっと踏み込んだ構成にしてもらいたかった。 単純に裁判の結末や呆気ない彼の最期を「事実」として伝えることだけが、 ドキュメンタリーの役割ではないはずだ。 彼が何を思いながら生き、何を思い死んでいったのか。 とことん突き詰めて意外な「真実」を1つでも多く見つけ出してこそ、 ドキュメンタリー作品の本当の意義は見えてくるはずだ。

  • mat********

    3.0

    ストーリーと感想。

     まず最初に言いたいが、この作品の邦題は、どう考えてもおかしい。英題を直訳すれば「私の敵の敵」だが、わかりやすく日本語にするなら、「敵の敵は味方」とすればいい。なぜこれが「敵こそ、我が友」になってしまうのか不可解だ。もっとも、フランス語の題名を翻訳サイトで日本語訳すると、「私の最高の敵」になってしまうから、原題は別の意味があったのかもしれない。 ・ストーリー   ドイツ軍占領下のリヨンのフランス人が、当時ナチス親衛隊の主人公バルビーの残虐行為について、次々に証言していくところから物語が始まる。当然、彼は敗戦後、戦犯として裁かれるはずであったが、冷戦の開始という状況の変化により、共産主義者についての情報をもっていたため、米軍から協力者としてかくまわれることになる。この辺は当時の日本でも同じで、戦後公職追放にあった政治家や実業家が、冷戦の開始とともにいつのまにか復権していったのは、ご存知の通りだ。さすがにフランス世論の非難が高まったが、彼はバチカンの協力の下で家族とともに南米ボリビアに逃亡する。そして偽名で商売を始め、その後、他のナチス残党とともに、軍部の親米クーデターに協力し、チェ・ゲバラの処刑にも手を貸す。そのうち、彼にナチス狩りの捜査の手が伸びるが、政府と結びついた彼には、司法も手が出せない。しかし、軍政が終わりを告げると、ボリビア政府にとって不要な存在になった彼に対して、再びフランスから身柄引き渡しの請求が来る…。   ・見どころと問題点 1、「なぜ彼がナチスの思想に共鳴し、それが敗戦後もずっとそのまま変わらなかったのか」という一番肝心の点が、見ている側に全く分からない。この作品だけでは、単に彼が残虐で頑固な人間だったからという理由にしか思えない。フランスでは、ナチスドイツについてはもはや説明不要だから、詳しい背景は省いたのかもしれないが、一般の日本人にとっては、やや状況説明が足りないように感じる。 2、全体的に、フランスに害をもたらしたバルビーを見逃したアメリカ政府に対する、フランス人の抗議の気持ちが強く感じられる作りだ。特に中盤以降、ボリビアでの人権弾圧や麻薬の密売などが、全てバルビーの後押しによるもののように見えるが、これは少し誇張ではないか。ボリビアでは、バルビーが政府機関に入り込む前から、左翼政党と親米軍部との激しい対立が長期間続いており、個人の力でどうにかできるような状況ではない。もっとも、クーデターが起きている時の実際の映像に映っていた戦車は、フランス製のものばかりだったのは面白い。この手の軍事援助と圧力にかけては、フランスも米ソに負けてはおらず、決して人権外交などしていなかったのが現実だ。フランスが彼の引き渡しを要求したのも、あくまでフランスでの過去の行為が理由であり、戦後のボリビアでの行動が理由ではない。  全体的に、実際の映像を可能な限り使用している嘘のないドキュメンタリーで、見応えはあるが、近代史や外交に全く興味がない人に対しては、あまり勧められない。見る前にある程度の基礎知識を仕入れておかないと、退屈に感じてしまうかもしれない。しかし、現代においても、敵に勝つためには、相手を問わず、利用できるものは全て利用し、不要になったら見捨てるという国際政治の冷徹さを感じるのには、よい勉強になる作品だ。

  • goi********

    5.0

    ノンフィクションの名手

    DVDで。 「あらすじ」で大体のストーリーは分かると思います。 第2次対戦で殺戮の限りを尽くしたナチスの虐殺者が、戦後、裁きを受けることなく、反共戦略を進める米国の庇護の下で息を吹き返し、逃亡の地・南米でヒトラーの思想を再びばらまくに至る・・・という恐るべき事実を追及した作品です。 この監督は、1972年のミュンヘン・オリンピックで起きたユダヤ人選手団へのテロ事件を扱った「ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実」の作品でも有名です。 ぜひ、こちらの作品も見て欲しい。 スピルバーグの「ミュンヘン」では描ききれていないアラブとユダヤの対立の根深さがよくわかると思います。 膨大かつ貴重な資料を次々と示しながら、物語を展開していく手法はさすがノンフィクションの名手です。

スタッフ・キャスト

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基本情報


タイトル
敵こそ、我が友 ~戦犯クラウス・バルビーの3つの人生~

原題
MY ENEMY'S ENEMY/MON MEILLEUR ENNEMI

上映時間

製作国
フランス

製作年度

公開日