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トウキョウソナタ (2008)

監督
黒沢清
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3.65 / 評価:465件

解説

東京に暮らす、ごく普通の家族がたどる崩壊から再生までの道のりを、家族のきずなをテーマに見つめ直した人間ドラマ。『回路』などで知られる黒沢清監督が、累積したうそや疑心暗鬼などにより、ありふれた家庭を壊していくさまを現代社会を映す鏡として描く。リストラを家族に言えない主人公を香川照之が好演するほか、小泉今日子、役所広司ら実力派が脇を固める。日本が直面している社会問題を、独特の緊迫感でサスペンスフルに描く黒沢の演出に注目。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

仕事に没頭する毎日を送っている平凡なサラリーマンの佐々木竜平(香川照之)は、ある日突然、長年勤め上げた会社からリストラを宣告されてしまう。一方、世の中に対して懐疑的な心を持っている長男・貴(小柳友)は家族から距離を置くようになり、一家のまとめ役だったはずの妻・恵(小泉今日子)にも異変が起き始めていた。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2008 Fortissimo Films/「TOKYO SONATA」製作委員会
(C)2008 Fortissimo Films/「TOKYO SONATA」製作委員会

「トウキョウソナタ」ひとりの中年女性のその佇まい、その姿勢。そこから何かが始まる

 この映画を作るにあたって主演の小泉今日子から監督に、「顔の皺も隠さず全部そのまま撮ってしまってください」という注文があったという。つまりそれは、「トウキョウソナタ」というフィクションの中に自分が生きてきたこれまでの人生の跡=皺をはっきりと映し出し、「小泉今日子」という人物の歴史をそこに注入してくれということであるだろう。そして、壊れゆく家庭を穏やかに包み込むこの映画の主人公の主婦の絶望と希望とにそれが見事に重なり合う、そんな映画にして欲しいという彼女からの要請だったのではないかと思う。

 だからなのかこの映画の彼女は、どこか世界の外側にいる。登場人物たちの誰もが何かに失敗し、その失敗を何とか挽回しようと、つまり成功への道を歩もうと懸命に生きているのに対し、彼女はそんな「成功と失敗」が作り出す世界にぼんやりと距離を置くのである。決して人生を投げている訳でも諦めている訳でもなく、そうではない別の人生をはっきりと感じ取り、未知の世界に震えながらもしかしそれに向けて身を投げ出しているといった風情なのだ。もう若くもなく、立派に皺も増えたひとりの女性のその佇まい、その姿勢。そこから何かが始まる。成功でも失敗でもなく、ただひたすら生きることの悲しみと苦しみと喜びに向けて、私も彼女とともに歩み始めよう。そんなことを思った。(樋口泰人)

映画.com(外部リンク)

2008年9月18日 更新

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