あらすじ・解説
東京の下町・浅草で注目を集めている振袖さんにあこがれる女の子(桂亜沙美)が、晴れてお座敷デビューする日を夢見て厳しい研修にチャレンジする(『粧いの街』より)。浅草を訪れる観光客に大人気の昔ながらの人力車。男手の中、女の子の車夫(吉田鼓)が奮闘し、さまざまなお客さんを人力車に乗せ人生経験を積む(『走る街』より)。
シネマトゥデイ(外部リンク)
作品レビュー(2件)
- ves********
3.0点
エンコ、というのは「浅草公園」を略してひっくり返した、戦前浅草が賑やかだったころの呼び方、 六本木をギロッポンだの言うみたいなもんですわな。 でも、エンコ、なんて若い奴に言われるとちょっと違和感あるね。 そんなのは、80過ぎたじいさまばあさまか、なぎら健壱ぐらいしか言わんよ。 (いや、なぎらさんが言うかどうかは、ただのイメージだけど…) えれじーというのもちょっと違う。 哀歌ではなく、庶民のふとした日常を綴った3本のオムニバス。 語呂で付けちゃったようなタイトルにはちょっと異論ありだが、 中身は浅草をちゃんと理解している人が作っているのがよくわかって、 すごく好感が持てた、という浅草生まれな私の感想です。 浅草を舞台にした作品は、とかくステレオタイプなイメージに流れがち。 下町の人情とかさ、きっぷのいいおかみさんとかさ、 けんかっぱやいけど涙もろい旦那とかさ、 狭い路地とかさ、テキ屋とかヤクザとかさ。 ―― はい、大袈裟でもなく、全部ほんとにありますよ。 でも、どうしても、どの作品の表現も小さく引っかかる。 間違っちゃいないんだが。 浅草育ちの、本作の監督さんはその辺、よく考えてらっしゃる。 なーんだかスルスルっと納得してしまった。 ヒロイン3人の設定が、 それぞれ浅草の生まれではない人間の目線になっているところが、 この街の内面を写す鏡となって面白い。 第一話で、初めて浅草の神輿をかつぐ女の子 第二話で、車夫の女の子 第三話で、振袖さん(芸者さん)の修行をする女の子 第2話に出てくるじいさんの台詞「浅草は根がタフな街」。 この街の本質は、その台詞に集約されているのではなかろうかな。 浅草の生まれではなくても彼女たちはすでに街にとけ込んでいる子たちである。 すでにネイティブ目線であり、他人事でなく浅草に生きている。 浅草のタフなところって、そこで生きて行こうとする力や、 これで死んでたまるもんか、みたいな力が、 そこで産まれた者もよそ者も、偽物も本物もごった煮にして、 やがて、シラっと自分の身にしていく。…じゃないのかな。 だから、街自体が震災やら空襲やらでいっくら焼けてもくたばらない、 たとえ「なりふり構わずぬけぬけと」であっても生き抜いて行く、 ダイハードであり続ける街に繋がっていくのかと。 (「浅草」を「東京」とか他の街に置き換えても話が通じるわ。地元贔屓理論でスマソ。笑) 第一話の、ちょっと性格イラッとくる(笑)神輿好きな彼女も、 けっこう大丈夫。がんばれ。でも花棒が肩に付いていないぞ(笑)。 ********** でもって、 ストーリーは何かどんでん返しがあるとか 棒泣きさせるとか、そんなことは全くなく。 私はこの作品が好きだ、褒めたいんだけど、正直に言うと ただ、いい話で終わっているのがなんとも映画としては物足りない。 深夜のTVシリーズだったら大満足です。 あと、BGMにメリハリがなく、単調。 もういっこ蛇足だが、「撮影している」のを第三者がフト見物している、 そんな場面が目についたるするのが、ちょっとがっかり。 ド素人がえらそうに言うのもアレなんですが、 もうちょっとなのよ。 ついでにもういっこ、さすがの哀川翔アニキは馴染んでいたが、柳沢慎吾いらん(笑)。
- taj********
4.0点
新東京タワーがもし晴海に建つなら愛称、「EDOはるみタワー」(笑)になったろな…と馬鹿な妄想をしながら、そういうわけで観てきました「えんこえれじー 浅草哀歌」。どんな話の切りだしだか。一週間限定単館上映、まともな公式ホームページすらなく、主演の女の子たちがあまりにも無名で(ごめんなさい)ドキュメンタリーと勘違いするくらい怪しい雰囲気感じていたのですが、自分のなかで良作探知アンテナが5本くらい立ってて、勘を頼りに行ったら鉱脈あたりました、というパターン。正統派の「いい話」三つに触れ、気分も軽く帰ることができました。 …とまあ、僕のような粘着質のないところと、下町人情の同居するのが浅草(らしいですよ)。 軽快な描写で、きっちり緒を締めてくるので、後味のよさは特筆ものです。 本作は、20分程度の短編3つからなるオムニバス。 若い女性の、ちょっとした日常のなかの成長を描きあげました。 第一話「ばかの街」。★★★です。地方出身で祭り好きな千秋(栗原美の里さん)が、ひょんなことで三社祭の袢纏を手に入れ、祭りに参加するまでを描くお話。浅草出身の彼氏、武男(利倉大介さん)のお決まりの文句、「おい腹の肉、ついてね?」が前半ギャグ、後半シリアスな展開の軸になっていました。結びの三社祭の映像、これはもうひと工夫だったかな。 第二話「走る街」。★★★★☆です。無愛想“なのに”人力車曳きをしている塔子(吉田鼓さん)の物語。彼女を追うカメラマン、志香乃(しいなまおさん)との会話は物語に全然絡んでこないのですが。仕事中笑顔をまったく見せなかった塔子が、終幕に心から笑うまでの「お話の積み重ね」がものすごく上手で、この評価としました。 また、その終幕のエピソードもいいお話でしたわ。吾妻橋に人力車、そして若いカップル…とくれば? いくら「カップル死ねしね団」団長の僕でも、あのシチュエーションには頬がゆるみました(笑)。 ちなみに第二話の途中、半世紀も前に浅草に住んでいたというお爺さんの話が印象的でした。 「浅草は根がタフなんだな。だから上がどんなに変わっても大丈夫なんだ」 「50年前、浅草に人力車なんてなかったよ。失礼だが、女性が曳くなんてありえんかった」 具体的にどこがいいかと聞かれても答えにくいのですが、老爺のいう「根のタフさ」、これが各作品にピシッと背筋通している。そんな良さが気もちよかったです。 第三話「粧いの街」。★★★★です。京都が舞妓さんなら、浅草は振袖さん。京都育ちだけど、両親の離婚を乗り越え浅草でお座敷デビューを目指す「こおろぎ」こと裕美(桂亜沙美さん)のお話。なんといっても、こおろぎのハキハキした振る舞いが楽しい20分間でした。これを連作の締めにした構成もよかったです。3人のなかでも、自分が一番前向きになれるキャラでしたから。 ちなみに副題に「哀歌」とあるけど、どの作品も哀愁やじめっぽさなんて明るくふき飛ばしています。たぶん、カメオ出演・哀川翔さんの「哀」じゃないのかな。 で、なぜ哀川兄貴が出演かといえば、「デコトラの鷲」と同じ会社が制作しているからなんですね。両作に関わっているのが須藤為五郎さんというひとなのですが、相当映画勘のいい方だと僕思っています。豪快な低予算っぷり(そんな言葉あるのか?)はありありなのに、ストーリーの積みあげかた、さっきも指摘した「締め」の上手さが光ります。先週観た「デコトラの鷲 其の五」につづき、「あー満足!」て叫べるつくりかた。そのくせベタさとは無縁なので、いざレビューで褒めようとすりゃ書くことがない(笑)。ちなみに今回、「走る街」は須藤さんの監督作。それ知ってあの出来、納得しちゃったなあ。総じて、この公開規模で量産される駄作映画群とは一線を画してます。 出演者、とくに主演3人の女の子たちはほぼ無名なのですが、各話にぴったりのキャラでした。人選はかなりのものです。とくに第二話の吉田鼓さん、第三話の桂亜沙美さんは、「普通にそこにいるような」女の子になっていて、演技という雰囲気をまるで感じさせませんでした。脇役陣では、裕美の父役の町田政則さんが渋かったですね。裕美がしんみりする唯一のシーンです。対照的なのが柳沢慎吾さん(当然デコトラの縁)、うざい!一瞬だけなのに(褒めことば)。 残念ながら金曜日(6.27)で劇場公開はおしまいです。たしかに、一般1800円だと評価多少落としていいかもしれません。僕は学生料金で観てるけど。でも、DVDで一話20分だけ、仕事の煮詰まったときに観て、心軽く仕事再開!といける映画かもしれません。もっとほっとしたいかたへ、おすすめの映画です。どこかの弁当屋みたいだ(笑)。
スタッフ・キャスト
人名を選択するとYahoo!検索に移動します。