レビュー一覧に戻る
コッポラの胡蝶の夢
2008年8月30日公開

コッポラの胡蝶の夢

YOUTH WITHOUT YOUTH

1242008年8月30日公開

Kainage_Mondo

4.0

何故か “癒し” のムードが漂う。

人生に絶望した老言語学者ドミニク・マティが、雷に打たれたことで若返り、ある種の超能力をも手にし、自身のライフワークたる “言語の起源” の著作に近づいてゆく。 チープな SF 物に堕するのか、と思わされる瞬間も何度かあったが、ぎりぎりの線で本筋に寄り戻し、際どい所で名作になった、と思う。 個人的には非常に好き ! な作品である。 若い頃に別れ、その直後に亡くなった恋人、その女性と瓜二つの女性に巡り合い、“事故”で九死に一生を得たその女性が、何故か、サンスクリット語しか話せなくなり、マティとの交流が始まる。 女性の輪廻転生が示唆され、海辺の別荘にこもる二人の周りに、耽美的な不思議なムードが充満し絡みつく。古代エジプト語すらテープに記録され、それを聴きながら、ヒエログリフを書いてゆくマティ。荒唐無稽にも思えるが、時間・場所・言語の境界を超越した物語の展開が、観る者を飽きさせない。 何故か、癒しのムードが漂い、懐かしい気持ちにさせる、不思議な物語、と私には思えた。 今を時めいている、「ベンジャミン・バトン」の先をゆく如きエピソードもあるが、ラストはこれまた不思議、旅行者として訪れた、故郷の馴染みの酒場で友人たちに囲まれ話すマティ、その後・・・。 フランシス・フォード・コッポラ監督10年振りの復活らしいが、68歳時の本作も瑞々しい感性に満ちている。大したもの、である。 また、最近、碌でもない邦題が多いが、本作は、原題の youth without youth を超えた趣のある題名ではなかったか、と思う。現実を生きているのか、夢の中にいるのか、“誰が” 夢見ているのか、それを頭に置けば、ラストシーンのヒントになると、云うことか。

閲覧数306