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アルジャーノンに花束を (2006)

DES FLEURS POUR ALGERNON

監督
ダヴィド・デルリュー
  • みたいムービー 29
  • みたログ 84

3.29 / 評価:28件

胸底の重り。哲学であり、社会に問う映画。

  • とみいじょん さん
  • 4級
  • 2017年10月11日 22時05分
  • 閲覧数 631
  • 役立ち度 3
    • 総合評価
    • ★★★★★

まるで実験体・シャルルの記録映画のように、冷静にシャルルを映し出す。
 最初に登場したシャルルが愛おしくなり、その後の変転に一喜一憂して気持ちが揺さぶられ、ジェットコースターのようになすすべもなく迎える結末。その顛末が狂おしいほど切ない。
 有名な作品で、すでに結末は聞いているはずなのに、衝撃を受け、喉の奥から嗚咽がこぼれる…。
 ”知識”としてあることと、”体験(この場合は感情移入)”することの違いを、我が身でも思い知らされる。

人間は、知識(知能)だけで生きているわけではないんだな、と。

原作未読。この映画はフランス・スイス制作だが、他にUSA版もあり、日本でも何度かドラマ化されている。それだけ人々の興味をひきつけてやまない題材。

この映画以外は鑑賞していないから比較はできない。Wikiによると、主人公の名がフランス語系になっているだけでなく、人体(臨床)実験の様とか、初恋の相手とか、結末とか、原作とはかなり変わっているらしい。映画の尺に合わせてか、シャルルの家族の話はほとんど割愛されているし。
 それでも、シャルルの変転に驚愕し、やるせなさ・憤りに胸が痛くなる。   Wikiで確認した小説のラストよりは、この映画の方がまだほっとする。


服薬するたびに知能がどんどん高くなっていくシャルル。それを喜ぶシャルルが愛おしい。
 初めての恋。瑞々しい宝物のような恋。
 けれど、知能を得るということはなんと残酷なことか。過去には思いもつかなかった視点を持つようになり、彼の中で過去と今の自分のバランスが相克し、崩れていく。その様が苦しい。
 同時に、薬は知能とともにあらゆる感覚を研ぎ澄まし、変えていく。あらゆることに過敏になり、味覚が変わり、イラつき、感情のコントロールが難しくなってくる。
 けれど、そんな感情をどうコントロールしたらよいか・社会性は体得しておらず、何も知らない人からは誤解され、それによってまた感情のコントロールが、と悪循環。
 また、同じ薬を投与されたネズミ・アルジャーノンの様に、自分の未来を予見して。
 そして…。

そんな様が、主演の俳優や、周りを囲む方々によって、丁寧に描き出された作品。
 特に、主演の、シャルルの知的能力の段階によって変わる表情や口の動かし方・手足の動かし方をはじめとするふるまい。言葉の発し方+気持ちの表現の仕方が素晴らしい。この演技がなければ、記録映画のようなこの映画は成立しない。
 エピソード等によって知的能力を表現するのではない。黒板に字を書くさま、食事をするさま等が違う。立ち方すら違うのだ。

だからこそ、純粋にシャルルに起こった出来事として、シャルルに感情移入し、周りの人間の中でではなく、”一人の人間”にとって、知能とは何なのだろうか、人の幸せとはと、考えさせられる。



実際の生活でも、

シャルルほどではないが、知能が半端なく高い方にお会いしたことがある。思考展開の速さが、それを表現する言葉・書き文字を凌駕してしまい、ご自身の考えていることをごく一部しか相手と分かち合えずに苦しんでおられた。倍速で展開する思考に振り回されて、疲れやすかった。
 感覚がとても研ぎ澄まされた方にもお会いしたことがある。その感覚に振り回されて、やはり疲れやすく、自分の本当に好きなことに没頭することができなかった。
 反対に、最初のシャルル程度の知的能力をお持ちの方ともお会いしている。素直さが仇になる方もいらっしゃるが、ご自分の芯がしっかりしている方は、周りへの感謝を欠かさずにできないことは誰かに助けてもらい、ご自分のできることで借りを返していくという、とても素敵な生き方をされていた。見習わなくてはと思う。


認知症研究の成果を見れば、近未来、実際に作り出されそうな薬である。
その時、私たちはどういう選択をするのか。
知的能力について改めて考えさせられ、
ひいては幸せとはと改めて考えさせられる映画。



追記:特に凝った色使いというわけでもないのだろうが、映像の色使いにも惹かれる。二人の出会いは、シックな木製がメイン。でも、臨床機関は、ちょっと緑が入ったペールブルー。

詳細評価

物語
配役
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