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香港ラバーズ 男と女 (1983)

HONG KONG, HONG KONG/男與女

監督
クリフォード・チョイ
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4.00 / 評価:1件

不法移民の、夢と現実

  • lamlam_pachanga さん
  • 2011年1月30日 22時55分
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  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

70年代末期、海外やTV業界出身の新世代の監督たちが一斉に映画界へ転出すると、商業主義が幅を利かせる香港映画界に、突如香港ニューウェーブ(新潮流)と言う新たな流れが台頭した。娯楽一辺倒の商業作品に背を向けた彼らの作品は、それまでの職業監督たちが目を向けることのなかった政治的、或いは社会的問題を捉えたものが多く、それは確実に次世代の監督たちへ影響を与えていたように思う。

この『香港ラバーズ 男と女』も、そんな香港ニューウェーブの潮流の中で生まれた一作。監督のクリフォード・チョイは、どちらかと言えば職業監督の類で、ショウ・ブラザースに所属しながらアイドル青春映画を手掛けていた人です。そんな彼が突然、当時の香港で社会問題になっていた(と言う)大陸からの不法移民問題に焦点をあてた物語を撮ります。

本作からおよそ20年後、フルーツ・チャンが『ハリウッド★ホンコン』と言う映画を撮るのですが、本作とあの映画には演出志向の違いこそあれ、その物語も結末も、基本的には同じものを描いています。

同じ境遇のふたりの男女が、辛い現実からの脱出を夢見る、この物語。

中国本土から不法入国してきた少女・マン(チェリー・チェン)と、タイ華僑の不法移民・コン(アレックス・マン)。不法移民がひとつ屋根の下で暮らすスラム街で、生活のために身体を売るマンと、賭けボクシングでのし上がるコン。やがて惹かれ合うふたりだが、マンは身分の保証欲しさに初老の男に買われていく。

この映画の演出には、83年製作と言うことを差し引いても、同時期のニューウェーブ世代の監督作品に見受けられた斬新さ、或いは個性を感じることはありません。

それはつまり、良くも悪くもクリフォード・チョイのそれは王道(ベタ)からそれることがないと言うことで、芸術性や社会性を追い求める癖の強かったニューウェーブ作品としては物足りなくとも、一本の映画としての物語性は十分過ぎるほど。

最も、そこはさすがにニューウェーブ真っ盛りの83年。

チェリー・チェンの大胆ヌードを交えた赤裸々な現実の描き方等は、明らかにそれ以前の香港映画とは一線を画すもので(とは言え70年代にエロス作品が流行したこともあるんですけどね)、この辺は、娯楽一辺倒で現実を顧みることのなかった70年代までの香港映画(自分)からの脱却を図ろうとする、クリフォード・チョイの映像作家としての意地みたいなものも感じます。

但しこの映画、それ以上に主演ふたりの熱演が素晴らしい。

チェリー・チェンは、私のご贔屓。大胆ヌードも厭わぬ熱演なんですが、そんなことはどうでも良くて、彼女の場合は出演してるだけで満足しちゃう(笑)なので、ここで私が素晴らしいと言っているのは、捨て鉢な生き方にも夢を追うコンを演じた、アレックス・マンのこと。

この人は、香港映画ファンなら絶対に知っている名前で、知らない人は、まだまだ香港映画ファンとは言えないでしょう。

『愛と復讐の挽歌』等、狂気的なまでの野心家を演じさせればピカイチ。当時、間違いなく最も嫌われていた悪役俳優No.1のアレックス・マン。そんな彼の若き頃が見られると言うだけでもそれなりの価値がありますが、本作では悪役ではないのに、既にこの後の野心家振りを垣間見ることの出来る熱演。一途にマンを愛し、幸せな明日を夢見て、毎日をエネルギッシュに生きるコンは、劇中登場するキャラクターの中で、最も観る側の共感を呼ぶ人間でしょう。

香港での明日を夢見るふたりの男女は、幸せをその手に掴むことが出来たのか?

冒頭とラスト・カットが突きつけるのは、残酷な無常。

フルーツ・チャンの“毒のあるおとぎ話”もビターな味わいでしたが、本作は、あれ以上に苦い物語かもしれません。

「映画は楽しくなきゃ」と言う方にはお薦めしませんが、そんな理由で見逃すには少々勿体ない。

少なくとも、私は、好きな映画です。

例え、そこに辛い現実があったとしても。

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