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さくらんぼ 母ときた道
2008年11月1日公開

さくらんぼ 母ときた道

CHERRIES/桜桃

1072008年11月1日公開

kit********

5.0

ネタバレ「無垢な笑顔」が痛いほどやさしい・・

いつものように事前情報の収集は行っていないのですが、予告映像とパンフレットを見ただけで内容はあらかた解かっていたこの作品。知的障害を持つ母親とその娘の愛情と心の絆を描くもの。それはおおよそ以下のパターンであろうと、予想がつきます。 娘が赤ん坊から幼少期まで、すなわちまだ母親のほうが精神年齢的にアドバンテージがある時期に育まれた母娘の絆、それが娘の成長とともに、すなわち精神年齢の逆転現象とともに徐々に溝が生じてくる。この「必然的」な溝が埋まるには時間を要するが、時が経ち娘が分別がつく年齢になってあらためて深まる心の絆・・。 このある意味予定調和のお話に対して、出てくる映像がいかに「力」を持つものであるのか、とても期待して鑑賞しました。 ・・・。 正直、前半はかなり厳しかったです。「無垢の愛」を強く印象付けるために、母「桜桃」の知的障害に由来する諸問題行動の描写にかなりの時間をかけています。言葉がろくにしゃべれず、精神年齢も5歳程度でしょう。それら問題行動はまともな感覚で見るとどうしても奇行に見えてしまう。 さらに娘となった「紅紅」に対する愛情は実に強烈です。愛情といえば聞こえが良いですが、悪い言い方をすれば「むき出しの本能(母性)」です。いくらそれらが知的障害故の言動だと「頭」で理解しようとしても、「感性」ではそう簡単に理解できるものではなく、感情移入がしずらかった・・。 しかしお話が進むにつれ、その映像は徐々に説得力を帯びてきます。その理由は、母の「無垢な笑顔」。 5歳くらいに成長した娘と共に豚を追うとき・・、娘をおぶって野道を行くとき・・、さくらんぼの木に登って娘のためにその実を採るとき・・、娘がおいしそうにそのさくらんぼを食べるのを見つめるとき・・、 やがて学校に通い始めた娘は次第に母を疎ましく想い始める・・、冷たい態度をとる・・、恥ずかしさのあまり「学校に来ないで」と母をなじり、あげくは家に鍵をかけてしまう・・、それでも突然降りだした大雨を見て、自らはずぶ濡れになりながらも娘のために遠路学校まで傘を届け、学校で娘の姿を見つけたとき・・、 これらのどのシーンでも母は嬉々として笑います・・。 娘に対するこの「無垢な笑顔」が痛いほどやさしいのです・・。「笑うこと」・・、それは知的障害をもつ母親の唯一の愛情の表現手段であり、一点のにごりも無い純粋なもの。ここにまぎれもない母親としての「真実」を垣間見ることができるのです。 実に力強い映像です。 そして物語の後半、時を経て幼い頃からの母の愛情に気づく娘、それは「母の愛」と「娘の愛」が重なり合うとき・・、激しく心打たれ、溢れる涙を止めることは出来ない・・。 ・・・。 話がやや本題からそれますが、この作品、内容を云々する以前に何となく引っかかることが多かったんです。日中合作映画とはいえ、製作スタッフの中心はほとんど日本人のようですし、また、日本でも人気を持つ『初恋のきた道』の脚本家が手がけたと大々的に宣伝し、邦題まで「似せる」念の入れよう。しかも、現在成長した子供の視点から、過去の親の姿を回想する、という基本的な構成まで同じとくれば、「柳の下」を狙ったんか、こりゃあ!・・なんてうがった想いも湧いてきました。 しかしながら、作品自体は期待に違わぬ素晴らしいものでしたのでそんな思いはどっか行っちゃいましたけどね・・(笑) ・・・。 補足しますと、母と娘だけではなく、やや影の薄かった(笑)父親も含めてしっかりと家族愛が描かれていましたし、雲南の山々と棚田の美しい風景も素晴らしかったです。 母親役のミャオ・プゥさんの演技がとても良かったですし、娘役の女の子が、小っちゃい子も大きい子も両方ともとても可愛かった!

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