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さくらんぼ 母ときた道
2008年11月1日公開

さくらんぼ 母ときた道

CHERRIES/桜桃

1072008年11月1日公開

皐月

5.0

ネタバレどうか、母さんを大切に…

昨日監督の舞台挨拶を兼ねた試写会に行ってきました。 私が今までめぐり合った映画の中で一番素晴らしい作品です。 皆様には是非とも、ご覧頂きたいと思います。 きっとあなたも、忘れかけていた大切なことを 思い出すはずです。素晴らしいなんて言葉じゃ足りない。 生きていて、この映画と出逢えたことに 心から感謝したくなる作品です。 是非ともご覧下さい。胸を張ってお勧め致します。 この映画を観る上で、重要な「キー」は以下をご覧下さい。 1.主人公、紅紅(ホンホン)の生い立ち 足は悪いが、気のいい正直者の父と、 心優しい、純粋な母に、紅紅は育てられます。 貧しいけれど、幸せな家族です。 母である桜桃は、知的障害を持っていたけれど。 もともと、桜桃は父親のお母さんにあたる、紅紅の祖母に 引き取られた身です。彼女は知的障害を持ちながら、 身寄りがなく、路頭に迷う寸前だったのです。 そして祖母は桜桃を、 実の息子である紅紅の父親のお嫁さんにするのです。 とても人情味あふれる人物ですね。度量の深い人です。 2.母親の限りない愛情 そもそも、紅紅は桜桃夫妻の子どもではありません。 実は、彼女は捨て子でした。 貧しい農村では、働き口にならない女の子は 捨てられてしまうのです。養っていけないからです。 それを桜桃が拾って帰るのです。 そうして実の娘のように、愛情を注ぎます。 父親の方が、紅紅を他の人に渡してしまうのですが、 桜桃は家にも帰らずに、ほとんど飲まず食わずで、 紅紅を探し続けます。 彼女にとっては、きっと自分の命よりも、 娘が大切だったんですね。 このシーンが、すごく切なくて悲しくて…。 そんな桜桃を見かねた父親は、紅紅を引き取るのです。 3.うすのろという、残酷な言葉 桜桃が知的障害を持っていたことで、 紅紅は事ある毎に、馬鹿にされます。 周りの子どもたちが、こぞって桜桃のことを 「うすのろ、うすのろ」と言うのです。 その意味がわからない彼女は父親に 「うすのろってなあに?」と尋ねます。 それに対して父親は生涯を通して、娘にこう教えるのです。 「紅紅、これだけは覚えておけ  お前がいるのは、母さんのおかげなんだぞ」 けれども、紅紅にはその深い意味がわからずに、 いつしか彼女は知的障害を持つ母親を邪険にしてしまうように なるのです。 4.貧しい、ということ ある大雨の日、桜桃は娘の身を気遣って、 邪険にされるとわかっていながら、 学校に傘を持って紅紅を迎えに行きます。 そして、そこで紅紅がいじめられているのを見て、 持っていた傘で、娘をいじめた子どもを追い回し、 叩いてしまうのです。 そのことが原因で、叩かれた子どもの父親が、 治療費を請求しに、桜桃夫妻の家に殴りこみに来ます。 そこで事実を知った父親は、桜桃をこれ以上ないくらい 叩きのめすのです。 しかし事態を見て、帰ってしまった来客を見送ったあとに、 彼は桜桃にこう言います。 「ごめんな、許してくれ。金がないからこうするしかなかった」 そして紅紅には、こう告げるのです。 「お前は悪くない。みんな貧乏のせいだ  どうか勉強して、立派になってくれ」 これは現代中国において、貧しい農村に暮らす者に 共通する考えのような気がします。 娘や息子にだけは、立派になって幸せをつかんで欲しい、 という親の願いですね。 5.母さんを、大切に 冒頭、こんなモノローグがあります。 「幼い頃、母と一緒にさくらんぼを食べた想い出は、  いつまでも心に残るでしょう。  私の「宝物」として」 さくらんぼが、この映画で母と娘を結びつける、 重要なキーとなります。 ラスト付近で紅紅はこう言うのです。 「母さん、紅紅が来たよ、どこにいるの?」 あとは皆様の目で確かめて下さい。 ここで配役について述べます。 桜桃以外のキャストは全て、素人を起用しています。 父親役はある楽器が弾けるということで 採用されたそうです。その楽器は劇中に出てきます。 紅紅役も1000人から選ばれた、やはり素人です。 監督いわく、「天才」です。 最後に監督についてですが、とても謙虚な方で、 自分のことはさておき、終始日中両方のスタッフ、 そして試写会来場者への謝意を述べていたのが とても印象的でした。 一流とはこういう人のことを言うのだろうと思います。 作り手も素晴らしければ、作品も最高に良かった。 是非是非、ご覧になってください。 私の中で、史上最高の映画です。

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