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さくらんぼ 母ときた道
2008年11月1日公開

さくらんぼ 母ときた道

CHERRIES/桜桃

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4.0

ネタバレ「母の愛」を支えた「父の愛」

 この映画では、知的障害がある母・櫻桃の、捨い子である娘・紅紅への「深い愛」を主軸に物語が展開していきます。しかし私は、その母娘を支えた「父の愛」にも深い感銘を受けました。  母・櫻桃は確かに娘には深い愛情を向けています。しかし、家事を含めた主要な「労働」を一手に引き受け、何くれとなく自分の世話を焼いてくれる「夫」の愛に対しては、特に感謝することもなく、当然のこととして享受しているように見えました。  この父は、「大きな娘」と「小さな娘」の二人を愛し、支えていると言えます。何と度量の広い、素晴らしい男性でしょう! この父親は、もっと高く評価されて良いのではないでしょうか…。  父親役を演じた方は雲南省の文化方面担当の公務員で、二胡が弾けるということで起用されたそうです。どちらかというと「さえない容貌」(対不起!我説得不礼貌…)の普通のおじさんですが、笑顔がとても温かい。実に適役だったと思います。  ところで、物語は最後に、娘・紅紅が村から進学して医者になったことが、成長した本人のナレーションという形で語られて終わります。  これは、素敵なエピソードではありますが…、中国農村の現状は決して明るいものではないようで、都会から来た若い教師が農村のあまりの貧しさに絶句して涙をこぼしたり、村きっての秀才として北京大学(!)に進学した女性が、卒業後の就職に失敗して家にも帰れないでいる、といった話が、マスメディアを通じて日本でも報じられています。  豊かな者同士のネットワークにコネがないものが食い込んでいくことは、決して容易ではないのでしょう。ますます進んでいく都市と農村の格差の拡大。農村を足場にして戦い、政権を獲得した中国共産党の歴史を思うと、何とも皮肉で遣り切れないことです。  そんな中でも、こういう映画が公開されることは「先に豊かになった」中国都市部の人間が農村に関心を向ける一助となるのではないでしょうか。  また、張加貝監督は日本映画を愛し、今村昌平監督の日本映画学校で学ばれたそうです。政治経済レベルでは日中関係には様々な問題がありましたし、それは今後も続くでしょう。しかし、映画を通じた「文化交流」は、それこそ満州崩壊後の満映スタッフの時代から現代まで連綿と続いていることに、映画を愛する一人として、ささやかな喜びを感じます。  

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