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ロルナの祈り (2008)

LE SILENCE DE LORNA/LORNA’S SILENCE

監督
ジャン=ピエール・ダルデンヌ
リュック・ダルデンヌ
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3.65 / 評価:99件

ダルデンヌ兄弟はロルナに良心を託した

  • 一人旅 さん
  • 2017年12月23日 2時04分
  • 閲覧数 267
  • 役立ち度 8
    • 総合評価
    • ★★★★★

ジャン=ピエール/リュック・ダルデンヌ監督作。

ベルギー国籍取得のため偽装結婚した女性の葛藤を描いたドラマ。

ベルギーの名匠ダルデンヌ兄弟による人間ドラマの秀作。ベルギー国籍取得のため薬物中毒の青年クローディと偽装結婚したアルバニア出身の女性ロルナを主人公にして、ある一点を境にクローディに対する愛情に目覚めてしまったロルナの苦悩と葛藤を静謐で淡々としたリズムの中に映し出しています。ダルデンヌ兄弟は現代の欧州社会が抱える問題を作品のテーマに選びますが、本作では麻薬・不法移民・偽装結婚といった社会の闇をテーマに取り入れています。

ダルデンヌ兄弟は観客に“行間を読ませる”社会派の映画作家です。セリフは極力排除され、本作では物語の行方を左右する重要な出来事の経緯まで意図的に省略されています。ですから受け身の鑑賞姿勢では主人公の心理や物語の展開を十二分に理解できない作りになっていますが、決して観客を置いてきぼりにはしない。言葉による説明や具体的な描写が省略されていても、観客が察せるように作られているのです。イギリスのケン・ローチもダルデンヌ兄弟同様に社会の底辺層を主人公にして現代社会の諸問題を浮き彫りにしてきましたが、両者の決定的な違いはここにあります。ケン・ローチは社会派ながらエンタメ性のある作品を撮りますが、ダルデンヌ兄弟は虚飾的なエンタメ性を極力排除し、苦しみもがく人間の魂の葛藤を真摯に見つめます。

本作は最近鑑賞した『午後8時の訪問者』(2016)とテーマが通じるように思います。要は、“人として在るべき姿”を描いた作品と言えるのです。ロルナはベルギー国籍取得のためクローディと同意の上で偽装結婚した身ですが、薬漬けのクローディはロルナに愛を求めてすがるような言動を見せる。ロルナはそんなクローディに冷たく接してしまいますが、ある一点を境にロルナの心情に変化が訪れ、やがて起こる悲劇的出来事がそれを決定的にします。自分の利益(国籍・金銭)の為だけに動いていたロルナは、クローディに対する愛情のような感情の他に深い悲しみや喪失感、罪悪感をも含んでいるであろう複雑な心理に苦悩していく。それは想像以上に深刻で、ロルナの中で現実と空想の境界が曖昧となる段階にまで発展していきます。そうしたロルナの心的変化を通じて、観客は移民の増加や麻薬の蔓延が進む現代社会において求められる、人として本来在るべき姿(良心)を見出すことができるのです。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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  • ロマンチック
  • 絶望的
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