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+1 プラス ワン vol.2
2008年10月11日公開

+1 プラス ワン vol.2

1032008年10月11日公開

lil********

3.0

ネタバレ深夜の肴ep2

上記のレビューのつづき。 『悪意』/篠原哲雄 人の死に際は今までわからなかったことが色々出てくる それまでギクシャクしてきた人間関係、妬み、ひがみ 父親の介護を怠ってきたにも関わらず遺産の事に目配りする長男と長女 一方、父親を献身的に介護してきた次男と長男の嫁 自由に暮らしてきて言いたいことだけ言う次女 そして、真面目で責任感の強そうな介護ヘルパーの女 次男、長男の嫁、介護ヘルパーVS長男長女 この図式が話の展開とともに、変容していく。 古い木造の家・・ 家の薄暗く広がる陰翳の中で次男と長男の嫁が重ねる情事・・・ ガラス格子をカメラバックに重ねられる情事 ガラス格子より透浸し床に反射した淡い光に闇の中から照らし出された二人の情事 二人の情事を侮蔑しながら見下ろす介護ヘルパーの女 そこへ、父親が一命を取り留めたと長男や長女から連絡が入り、 「さっきはすまなかった」と素直に謝る長男と父親の生存に心の底から安堵する長女 しかし、父親が一命を取り留めたにも関わらずに 次男と長女の嫁は病院へ行かず、さらに情事を重ねる。 情事を終えた後、お互い何かを企んでいるかのような表情 外で二人の情事を一部始終聞いていた介護ヘルパーの女も・・・ もしかしたら、 次男は、長男の嫁を我がモノにし、兄貴への積年の恨みを晴らそうとしているかも 長男の嫁は、次男を利用して傲慢な夫と別れようと思っているかもしれない。 介護ヘルパーの女はこの二人の関係をネタに家族をゆすろうと考えているかもしれない 観終わった後、タイトルをみて気づいた。 本当の「悪意」は一時の私利私欲で動いた者達にではなく、 父親の介護を献身的に行ってきた彼らに向けられたものだったのだと・・ 『いつかあの日となる今日』/安藤尋 同窓会で再会したかつての恋人同士は、お互いまだ未練があること を感じるが、もう二度とヨリを戻すことはないことも分かっている (リーフレットより抜粋) 様々に描写される二人の距離。 ・ 雨の中、傘を持たず店の軒先で雨がやむのを待つ二人と 二人の前を一つの傘で身を寄せ合い通過していく恋人たち ・ 女の家の玄関前で傘借りに来ただけだからと入るのを躊躇う男と茶化す女 ・ 女は台所でコーヒーを入れ、男はすぐ傍でタバコを吸う。引っ越し前で ガランとした部屋の中で昔話をしながら談笑する二人と台所 ・ 昔の話に懐かしむも、つい話題が別れた事にいってしまい気まずくなる   二人。生活感のないガランとした室内で、すぐ近くにいるのだけれども 近い故にハッキリとした二人の距離を認識し、 今はもう互いに遠い存在となっている二人 ・ 階の違うエレベーターの前で互いに、一歩が踏み出せない。 一歩を踏み出そうとして出来ない互いの表情や細かい動作が二人の距離を示す。 しかし、ある女性が女の前を通りエレベーターで下へ降りて男の前を通り過ぎた事 で、心理的な二人の距離を物理的な(見える)距離として顕在化する。躊躇いつつ も男はエレベーターのボタンに手をかけるが、空のエレベーターだけが女の元へと 昇ってゆく。可視化した距離が没したことで、まだ互いに未練がある関係に終止符 が寂しくうたれる。 題材も短編の表現にあっていて新しくはないけれど明快で ストーリーの展開と表現が同じレベルで合致していた作品。 。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。 いずれの作品も私たちの身の回りの「日常」をテーマにした作品でした。 近年、流行している「日常」。 しかし短編で表現される「日常」は 長編映画で描かれるそれよりも、どこか愛おしい。 それはきっと日々変化していく周囲の状況に、 瞬間的にしか自分の皮膚感覚で反応することができない そんな現代の速度の中に我々の生活があるからかもしれない。

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