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きつねと私の12か月
2009年1月10日公開

きつねと私の12か月

LE RENARD ET L'ENFANT/THE FOX & THE CHILD

962009年1月10日公開

mis********

3.0

ネタバレ『昔子供だった大人』のための映画かも。

子供、動物、自然とくれば、わくわくする冒険+最後は心温まるストーリーを想像するかもしれないが、この映画は全く違う。 観終わった後は痛む胸と後味の悪さを残して座席から立ち上がらなければいけない。 それは自分の過去の過ちを見せられたときの感覚に似ていて、映画では味わったことない感覚だ。 セツナイ、カナシイ、ツライ、クルシイ、イタイ、映画を観て今まで色んな思いをしてきたけれどこの映画を観た後の心境は・・・そう『惨め』だった。 その原因は映画の終盤で主人公の少女がおかした過ちによる。 それは、感覚的に誰もが覚えあるものだと思う。 彼女に悪意は微塵もない。ただ知らなかっただけだ、「それをやってはいけない」と。 子供故の純粋で一途な思い。それが取り返しのつかない悲劇を生む。 ひょっとしたら、あれだけきつねと過ごしているのだから彼女には学校に友達がいなかったのかもしれない(そういう描写はないが)。やっとできた友達に、人間同士の遊びを押し付けたのかもしれない。 でも、それは絶対やってはいけないことなのだ。 私は元野良猫を飼っている身だからよく分かる。野生の動物にとっては『人間に懐く』というのは死活問題。 ただ森の中を散策してればよかったのに。 草原で寝転んで二人じゃれあっていればよかったのに。 少女が笛を吹いたらきつねが応え、そうやっていればよかったのに。 それは全てが崩れ落ちた瞬間で、昔子供だった私は彼女の気持ちが分かり、今大人である私はこの先起こるであろう悲劇を予感してつらかった。 頭の中でいやというほどサイレンが鳴り響き、その悲劇の瞬間は堪え切れずに軽く声をあげてしまったほどだ。 この映画の結末はやるせない。 人間と自然界との共存、その難解さや人の身勝手さがもろに表れている。 (ダイレクト過ぎてちょっとつらい・・・) しかし同時に、そのやるせなさがあるから、ラストやはり『純粋で何も知らない子供』の言葉に救われた気がした。 この映画のいいところは忘れかけていた子供時代を思い返せること(痛みも伴うけれど)。 少女がきつねと夜を明かすシーンなんて「あぁ、こういう風にみるとまるでファンタジーだな」と思ってひどく懐かしくなった。 立入禁止区域や危険地帯にも平気で入っちゃって、友達と作った秘密基地、そこで門限過ぎるまで遊んでは怒られ、あの頃は動物とも普通に話してたような気がする。 夜は深く終わりがないようで怖かったし、雪は魔法のようだと思ったし、風はなにかの唸り声に聞こえた。 雲の形でいくらでも話は尽きなかったし、ただ青い空、道端の雑草、水たまり、石ころ、なんにだって心を動かされ、世界を広げることができた。 今はもうあんな風に世界はきらめかないな~とちょっとせつなくなくなりました。 もうひとつのいいところは自然。 やはり『皇帝ペンギン』の監督なだけあって、自然の切り取り方がうまい。ただ撮っているだけじゃなくて、自然の表情を撮っている。リラの住む自然豊かな環境にはとにかく圧倒された。 彼女が日々散策しにいく森には狼や熊が住んでいて、そういった生き物達に出会ったときの彼女の対処法も「えらい度胸据わってるんだな~」となんだか感心してしまったほどです。 他にもたくさんの動物や植物が生きていて、まるでジブリの作品に出てきそうな光景そのままで感動した。 それから訳もとてもよかった。 フランス語は分からないが、言い回しの美しさや表現の豊かさが際立っていて素敵だったと思う。

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