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コトバのない冬
2010年2月20日公開

コトバのない冬

942010年2月20日公開

rei********

4.0

届かない声、届かない想い

2011/1/29 自宅にて(DVD)ひとりで 本作については、予告編さえ見る機会がなく 『渡部篤郎 初監督』『高岡早紀 主演』ということしか知らず。 しかしながら、タイトルから静かな作品であるような気がしていたので、 集中して見ることができる状態&気分になるのを待っていたら レンタルしてから1ヶ月が過ぎていた。 そんな直感どおり、時間と集中力のあるときにしっかり見ないと 何が何だかわからなくなるタイプの作品でした。 冒頭から、いわゆるセリフ(説明)が少ないなので 『彼女はどこに向かっているのかな?』 『彼女は何を考えているのかな?』 『彼女は…?』 そんなことを思いながら彼女を見つめていたら あっとゆう間に作品の世界に引き込まれていた。 本作では、雪に囲まれた土地が舞台となっていて、 ある一人の女性を追いかけたドキュメンタリーのような作りになっている。 ひとりで車を運転する姿、家族の中にいる姿、職場での姿、 携帯電話を握りしめ誰かからの連絡を待つ姿、そして、ある男性と過ごす姿。 あたりまえだけれど、その時々によりキャラクターは変わる。 静かだったり、積極的に話したり、寂しげだったり、楽しそうだったり。 そう、描かれるのは大きな事件などない、普通の暮らし・普通に生きる人なの。 ただそんな淡々とした日常のなかで、ある出会いがあり、 静かな変化が起こるのだけれど、あるアクシデントによりその記憶を失ってしまう。 私の大好きな映画「エターナル・サンシャイン」も記憶モノで、 "記憶を失い、そのことに気がついた後"までを描いているのだけれど、 本作は"記憶を失ったまま生きる"ところまでしか描かれていない。 彼女にとってそれは、大切な出会い・変化であったはずなのに、 何事もなかったかのように人生を先に進めてしまう。 いってしまえば、ただそれだけの物語。 起承転結の"結"はない。 でもね、それこそが人生を切り取った感がして、私にはグッときました。 次の瞬間には記憶がよみがえるかもしれない。 未来のことはわからない。 そういう人間の不確かさ。 それにね、淡々としながらも、 ちゃんとラストに山場(=感情があふれるシーン)があり、思いがけず落涙。 そのラストシーンの、彼の演技がとても素晴らしいのだけど、 そのあとの、白い画面と"サクッサクッ"という雪を踏む音と音の空白が さらにさらにさらに、私を哀しいきもちにした。 全体を通して映像が美しく、彼と彼女が触れあうシーンが特に印象的。 渡部篤郎監督本人が出演していることを知らなかったのでびっくりしたけれど、 本作での役柄がすごく魅力的(私好み)で、しかも彼の静かな叫びを見事に演じていて、 だからこそこんなにも感情移入できたのかもしれません。 ★★★★ 4.0

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