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コトバのない冬
2010年2月20日公開

コトバのない冬

942010年2月20日公開

chi********

5.0

コトバにできないほど繊細な、いい映画です

東京国際映画祭で観てきました。 映画は主演の高岡早紀さんのシーンからスタート。 北海道の小さな町で、父親と単調に暮らす黒川冬沙子(高岡早紀)が ふとした事から、コトバの話せない男(渡部篤郎)と出会う。 東京から実家の北海道に一時戻ってきた、大学生でモデルの仕事をする 妹(未希)と、家族付き合いのおばちゃん(渡辺えり)、 コトバの話せない男の上司?(広田レオナ)が物語を進めてゆく。 北海道の雪景色に、馬たちの躍動感のある情景。 赤いジープで走る道。なにげない会話。 家族の日常の風景。バスを待つ姿。 携帯を取り出しては、繰り返し恋人に連絡を取ろうとする冬沙子。 そんな単調で、ある時は孤独を感じるような冬沙子が、 ある日、大雪の中でコトバの話せない男に出逢う。 その時はすぐに別れるのだが、冬沙子と男の感情にに何かが 湧いてくる。 2人は1人の孤独な時間に、お互いを思い出す。 それは何なのか、2人にもよくはわからない。 そして、一緒に男の働く、冬には閉まっている遊園地で 話をし、バイクに2人乗りをして、戻った遊園地で0ミリに接近。 刻まれる温度。 そんなある日、冬沙子にアクシデントが起きて入院することに。 失われた少し前の記憶。 欠落しているのは短い期間の記憶だけなのだが、、。 そこに駆けつけた恋人、急展開する物語。 とにかくラストまできれいに撮られている印象だった。 雪や馬や、ちょっとした町と家の情景をうつしてあるだけなのに、 映像が綺麗なのだ。 家族や知り合いとの会話(渡辺えりさんの)が異常に面白くて 可笑しくてしょうがない、爆笑ものの場面があるかと思えば、 コトバのはなせない男との無音の世界。 音楽も入ったり、切られたり、 刻まれた映像でのそれぞれの役者さんの、生き生きとした表情や それぞれのキャラクターにハマリきった、言葉と動きに雰囲気。 思いがけずラストに向けて急展開する物語。 そして、静かだけれど、まだこの後にかすかに、わずかに、 何かが起こりそうな予感を残すラスト。 とてもとても素敵な映画だった。 自然な映画なのに、ロードムービーなどの枠組みにも、どのジャンルにも 入らないような、ほどよいゆるさと、緊張感と、物語と役者と、音楽に 映像の美しさも全部揃っていて、最後には観客一人一人が色んな感想を 抱けるような、ちょうどいい隙のようなものもあり、 心底、センスのいい、しかも新しい監督さんだなーと思う。 初監督で、自主制作で、低予算でここまでやるなんて、 渡部篤郎という役者さんは、こんな才能があったのかと驚きました。 素晴らしい!というほど、この映画は普通の映画のように、 多くを語ろうとしない映画な気がして。 素晴らしいのだけれど、それよりも素敵だった!と思った。 そして、渡部監督は、些細に思える日常にも必ずドラマがあり、 幸せも確実に存在することを、繊細に、丁寧に写し撮った作品を 届けてくれました。 こんな日常を愛する気持ちこそ、素晴らしいことを、伝えてくれた 気がして。 それって、一番素敵なことだと思えました。 渡部監督曰く、低予算でもこんな映画が撮れる。 才能のある人たちが色んな作品を発表できるように、布石になればということで、 その映画への想いにも感動したので、星は5つです!

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