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小三治 (2009)

監督
康宇政
  • みたいムービー 32
  • みたログ 47

4.23 / 評価:13件

「そりゃあ、観に行ったほうがいいよ」

 どうよ? と聞かれりゃ「そりゃあ、観に行ったほうがいいよ。見なきゃ語れもしまいよ」 行こうかやめようか迷ってるという友人に言ったことだ。

 私は下高井戸シネマで見たんですが、元気な中高年と老齢者で、いつになく混んでましたねえ。通路に座布団、最後列に補助椅子、そして壁際で立ち見。私にとって30年来のアイドルである東京落語の小三治。上方のアイドル・桂枝雀亡きあと、私には彼しかいなかったのだから、これは中身がどうあれ私にとっては見ない理由のひとつもない映画だった。

 「あくびの指南」や「らくだ」など、迫力ある高座のシーンには、「いよっ、得したア!」と思わず心中で快哉をさけぶ。また、楽屋で過ごしている姿や、ピアノの先生とのボーカルレッスン、弟子への思いを語るところ、など、彼の話芸の舞台裏が垣間見ることができた。そのことがすべていいかと言えばファンの気持はわかれるところだと思うが…私自身は、意地っ張りで頑固なへの字口の小三治が好きなんだから、「95点のテストを前に、何で100点取れないんだとしかる父親の影響下からでられない」話や「ぼくは歌の好きな少年だったぁ!」と詠嘆されたりするところは、まあ、見たくないところだった。見たくなかったけども、でもそれも、おおいに彼なのだ。それにしても「俺はずっと自分探しの旅をしてきたんだ」というセリフは死んでも彼の口から聞きたくなかった。
 貴方の生きざまみてりゃ、みんなわかってらあ、そんなこたあ。言わぬが花ってえじゃねえか、聴く方は恥ずかしすぎラア…。 これまであまり自分を語ってこなかった彼が、ここ数年NHKのトーク番組に出たり、このようなムービーをとらせたりすることに、私は一抹の不安を覚える。
 ある種の締めくくりに入っているのかい。願わくば、江戸のツバメがついっとそっけなく行っちまうように、小三治師匠には噺家人生も粋にたたんでほしいものだが…私は小三治にそういうダンディズムを期待している。だがこの映画を見ている限りでは、それはお門違いだったのかもしれないと思うようになった。だからと言って小三治の芸が私のの中で価値が下がるというものではない。一人の人間の魂の中にはいろんな人間が住んでいてひとりをつくっているのだから。
 小三治が楽屋で女弟子に足先を揉ませているその向こうで、小三治いわく「この子にはあたしは何も教えてない」という、弟子の柳家三三が一心にネタを繰っているシーンが好きだな。
 最後の「鰍沢」、小三治の間がもうひとつだった。飛ばしちゃってたな。

映画を観終わって、春風に吹かれて帰路を急ぎながら私は、10年ぶりに落語会に行こうと思ってる自分にきがついた。…それは弟子の柳家三三の会なんだけど。

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