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ハゲタカ (2009)

監督
大友啓史
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3.96 / 評価:1101件

良質の【経済サスペンス】の誕生

  • のんびりレオン さん
  • 2009年6月4日 23時21分
  • 閲覧数 700
  • 役立ち度 116
    • 総合評価
    • ★★★★★

NHKで好評をはくしていたシリーズの映画化ですが、その後リーマンショックが起き、クライスラーそしてGMが破綻するという事態になって、とてもタイムリーな公開となりました。

経済問題を題材とした映画ということで敬遠気味な方もいらっしゃるでしょうが、硬派な映画というよりは、日本の大手自動車会社の買収をめぐる攻防戦=マネーゲームを、サスペンス調で盛り上げたエンターテイメントと言ってよいと思います。
ヤマ場のどんでん返しにはカタルシスも得られ、なかなか爽快です。
マネーゲームの手法の知識はなくとも、雰囲気だけつかんでおけば十分楽しめるでしょう。

企業買収も、ホリエモンによるニッポン放送=フジテレビ株の買収劇によって、私のような素人にも身近に感じられるようになりました。
ホワイトナイトという言葉も、あの事件ですっかり有名になりましたが、本作では赤いハゲタカに対して元祖ハゲタカの鷲津ファンドがホワイトナイトになります。
エンドロールを見ていたら、フィルムパートナーにこのニッポン放送が名を連ねていることに気付きました。この映画のテーマは、他人事とは思えなかったのでしょうね(笑)。

また、川崎オスカーさんが指摘されている、アデランス社の最近の株主総会の記事を読むと、敵対的買収を図る外国投資ファンドvsホワイトナイト役の国内ファンドとの対決,株式買い取り価額の吊り上げなど、この映画に描かれていることが現実に進行しているということがよく分かって、興味深いものがあります。

また、この映画では赤いハゲタカの背後に潜む中国資本の脅威も描かれていますが、今や中国によるエネルギーや資源の買い漁りというニュースはよく耳にします。アフリカやアジア等の資源国への大規模な経済援助・軍事援助の見返りに、石油や貴重な資源の採掘権などをどんどん取得していくのです。自国の高い経済成長を維持するためには、資源・エネルギーの確保、高度な技術の導入が必須なのです。
本作の背景事情にも、さもありなんと思わせるリアルさを感じます。
(余談になりますが、独裁政権による非人道的な行為がされているとして西欧諸国が経済援助を見送っている国にも、中国はお構いなしに援助して見返りを得ています。あ、中国バッシングを展開しようとしているわけではありません。)

TV版では、ハゲタカとなった鷲津(大森南朋)と銀行と企業の狭間で悩む芝野(柴田恭平)を中心として、銀行の貸し剥がし・貸し渋りで辛酸をなめた栗山千明、松田龍平らが絡んで、マネーゲームに翻弄される人たちの人間ドラマが色濃く描かれていましたが、この映画版では、レギュラー陣の人間模様にはさほど焦点をあてず、もっぱら中国系ファンドを率いる劉一華(玉山鉄二)の謎めいた生き方を描きます。

したがって、ドラマ未見の方は旅館主人の松田龍平がなぜここで絡んでくるかは分かりませんし、鷲津がこの対決に乗り出す心理も説得的に描かれているとは言えません。

しかし一方で、この劉という人物は、単純な拝金主義者や野心家としてではなく、複雑なキャラクターを持っている謎めいた男として描かれています。
この劉を演じた玉山さんの演技の素晴らしいこと!
赤いハゲタカとしての野心、傲岸さ、非情ぶり、研ぎ澄まされた鋭利な感じ、等々巧く表現するとともに、その謎めいた翳の部分も巧みに演じていました。
以前は、たくさんいるイケメン俳優の一人と思っていましたが、「手紙」での好演、そして本作での演技で、同じ世代の男優では群を抜いていると感じました。
それだけに、劉の行く末の演出は、よくあるパターンになってしまったようで、若干残念でした。

この「ハゲタカ」シリーズは、マネーゲームなどに踊らされずに、地道に勤勉に技術力・サービス力を磨いてきた日本企業、そしてそこに勤める日本人の底力に対し、エールを一貫して送ってきました。

これからも、さまざまな経済現象が起きてくることでしょう。
それらを題材にエンターテイメントとして提供してくれる、この「ハゲタカ」シリーズの続編に期待したいと思います。
なので、甘めですが☆5とさせていただきます。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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