ここから本文です

空気人形 (2009)

監督
是枝裕和
  • みたいムービー 944
  • みたログ 5,391

3.87 / 評価:3532件

こころ

心をもつことは、切ないです・・・
心をもつことは、苦しいです・・・・

心を持った不思議な空気人形は、ぽつんとつぶやく。

心なんて持たなければよかった、 のか?

彼女(空気人形)がいろいろな経験を経て、ラブドールの製作者であるオダギリ・ジョーを訪ねて語りあうシーンに、彼女の答えは出てきますが、とても印象に残るシーンでした。


ふくれあがる孤絶感に押しつぶされそうになっている人たち
コミュニケーション不在の中で、防衛反応として自分の心の中にファンタジー(夢想)のバリアを張って、なんとか生きている。
どこか虚ろで、どこかねじれて歪んでいる。
空気人形を取り巻く人間は、そんな人たちばかり

そんな人間の営みは、周りからみれば、ときに滑稽で、ときに醜悪
でも、みんな必死にもがいて生きている。
この映画は、そんな人間の営みを清濁併せて描きだしている。
あり得ない物語で映し出せる、人と人との繋がりの不思議さ、その大切さ


たしかにエグイ描写もあります。
しかし、全編を通じて見れば、優しさ、暖かな視線を感じられる映画でした。
カメラワークや音楽が、映画のコンセプトにとてもマッチしていて、とても心地良かった。


一人ぼっちの老人が空気人形に教えてくれる詩(吉野弘さんの「生命は」)が、流れるシーンは、とっても素敵で心に沁みました。
この詩の心が映画全編の心に繋がっていると思うし、ラストシーンはまさしくこの詩そのものです。


そして、キャスティングの絶妙なこと
何より、空気人形を完璧に演じたペ・ドゥナさんの演技は素晴らしい。
心をもった人形が、次第に学習していく過程の演技の見事さは言うまでもなく、心を持ったことの喜びや孤独や憂鬱さを、体を張って演じきっていました。
この映画のポイントとも言うべき、彼女とARATAさんとの重要なシーンでの、彼女の演技、ことに上気した顔つきのエロチックなこと!
また板尾さん、ARATAさんも役どころにピッタリの演技でした。


そのうえ、心を持った空気人形がバイトをするのが、ビデオ・DVDのレンタルショップというのが、映画ファンにはこたえられません。
岩松了さんが店長ですが、岩松さんやARATAさんが繰り広げる映画にまつわるトークが愉快でした。
特に、レジのところに貼ってあるポスターが、「赤い風船」のポスター(おそらく昔の公開当時のもの)ということも気に入っています。この映画も、心をもった風船の物語でした。


思えば、10年前に「ワンダフルライフ」を劇場で見て以来、その設定の卓抜さや、優しい視線を持ちながら綺麗ごとで終わらせずに人間を描く、是枝ワールドに魅力を感じてきました。
本作もそんな是枝ワールドを満喫する1作でした。

■余談
?前述した吉野弘さんの「生命は」という詩は素敵なので、ネットででも調べて、是非読んでみてください。吉野さんには、「祝婚歌」という有名な詩もあります。
?「心なんて持たなければよかった」というフレーズは、「言葉なんかおぼえるんじゃなかった」というフレーズから始まる田村隆一さんの有名な「帰途」という詩を連想させます。ここにいう「言葉」と本作での「心」は類似性があると感じます。こちらもぜひ。
?ラブドール(ダッチワイフ)
ラブドールと暮らす板尾さんの生活ぶりは、その性的なものより、この人は疑似家族を持ちたいんだということの方が強く感じました。
キワモノのように思えるけれど、このようなラブドールもそれなりに需要があるんだろうなと思い、ネットで検索してみたところ、Wikiはなかなか興味深いものでした。いわく、この人形は若い男性の擬似SEX用と思われがちだが、実際には中高年男性の需要が多くて、伴侶と死別した寂しさを紛らわせるためという理由などが購入動機になっていたりするそうです。南極1号についての俗説も嘘だと書かれていました。興味のある方は検索してみてください。
?是枝監督は、同じ業田作品の「自虐の詩」を映画化したかったそうです。是枝版の自虐の詩は、ぜひとも見たかった。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 悲しい
  • ファンタジー
  • 不思議
  • 不気味
  • 切ない
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ