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クララ・シューマン 愛の協奏曲
2009年7月25日公開

クララ・シューマン 愛の協奏曲

GELIEBTE CLARA/CLARA

1092009年7月25日公開

yam********

3.0

名曲が聴けたと言うことで・・・

私のもっとも好きな作曲家はブラームス。 ベートーベンは、別格で、順位が付けられない。 この映画は、そのブラームスの若き頃(20頃)から話が始まり、シューマン夫妻を主人公とした映画と言うことで、大きな期待を持って視聴した。 しかし、ブラームスとクララの恋愛(実際に、ブラームスがクララに対してどの程度の異性としての感情があったかは、史実上不明)を軸にドラマが展開されていて、歴史的な音楽家同士の出会いと交流をシリアスに描いたと言うよりも、3人の人間関係を中心とした恋愛ドラマであった。 ブラームスが終生クララを慕い(異性としてなのか音楽家としてなのかは疑問)、ロベルト・シューマン亡き後、様々な支援をしていることは、伝記などにも記述される如くである。 シューマンは、生前二人の関係を疑っていたと言うこともあるようであるが、確証のないものとされている。実際は、それ以上に、梅毒と、精神障害(今の診断であれば、“双極性障害(躁鬱病)”、或いは、統合失調症か?)で、自らを律することができない状況で、天才ブラームスを発掘したことで、自分の成し得なかったことを彼に委ねたいと考えていたようである。 シューマンは、(多分)鬱状態の時に、ライン川に身を投じて自殺を図る。 ただ、映画では、躁状態での行動として描写されている。 史実が何れかは、別として、この映画では、可成り踏み込んで、二人の恋愛物語として描こうとしている。 その点が、この映画を陳腐なものにしてしまっていることは否めない。 しかし、性格的にベートーベンに似ていると言われ、処世術に稚拙であったブラームスが、クララに対して積極的に自己表現できたか? ブラームスの音楽を聴く限りでは、ベートーベン以上に、内省的で、自己表現が不得手であったと思われる彼が成し得たことは、陰ながらクララを支えること。 また、そのことが、彼にとっては一番の自己表現であったのではないかと思われる。 ベートーベンを主人公にした映画にも、多分“エリーゼのために”の曲のお陰で、必ずと言っていいほど、実らぬ恋が描かれているが、彼にとって、恋と音楽とどちらが大切であったのであろうか・・・ 芸術家は、ある意味、今で言う“アスペルガー症候群”を伴う精神状態であると考えて好いのではないかと思う。 一般人の考える幸福感、欲求の満足感では、彼らの本当の成就感は理解できないのではないかと思う。 満腹の食事よりも、自分の求めた旋律、求めた音色が得られたことに快感と成就感を得られる。だからこそ芸術が生まれる、しかし、凡人には、形は真似て一時の流行の流れに乗ることはできても、普遍的なものは残せない。 これは、音楽に限らず、美術、文学でも同じ事ではないだろうか。 それは別として、この映画は、シューマン夫妻の演奏旅行の場面に始まり、クララによるシューマンのピアノ協奏曲の演奏に繋がる。 名曲ピアノ協奏曲をクララが演奏する場面は、音楽好きにはたまらない場面である。 ただ、ロベルト・シューマンが落とした指輪をブラームスが拾う場面は、取って付けたようで如何にも安っぽい。 ・・・等々、ブラームス・シューマンのファンとしては、安っぽい演出ではないかと思うのだが、冒頭の“シューマン:ピアノ協奏曲” エンディングの“ブラームス:ピアノ協奏曲第一番”(映画では、初演のようにクララが演奏しているが、初演は、ブラームス自身のピアノで、指揮は、親友のヨアヒムだった筈。) 途中に散りばめられた、ブラームスの“ピアノソナタ”“ハンガリアンダンス5番”等々の、名曲が聴かれることは嬉しい。 ただ、ドイツ映画と言うことで、可成り考証もしっかりしていると思っていたのだが、オーケストラ配置は、頂けない。 第1第2バイオリンを左に置く配置は、1930年代に、ストコフスキーが用いたのが最初とされている。それまでは、左右は別として、バイオリンは第1第2対称に左右に置かれていたはずである。勿論、サロンなどでの演奏会では、場所の関係もあり、随分臨機応変の配置はされていたようであるが、公開の演奏会では、弦楽器を、高音部から低音部へと半円形に配置することはなかったはずである。 些事ではあるが、管楽器にも、当時は存在していなかった形のものも・・・ この映画が、ロマンスを重点に置いていることからすれば、そこまでの考証はしてなかったのかもしれないが・・・ 原題は“GELIEBTE CLARA”・・・???愛されるクララ?クララの愛? ・・・ドイツ語は苦手なので・・・ その意味では、致し方ないのかも? 私個人的に好きな名曲が取り入れていたことで、凡策の評価から、平均点に評価をあげておくことにしたい。

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