解説
『ディパーテッド』のマーティン・スコセッシ監督とレオナルド・ディカプリオが再びタッグを組んだ、不可解な事件が起きた孤島を舞台に、謎解きを展開する本格ミステリー大作。原作は『ミスティック・リバー』の著者、デニス・ルヘインの同名小説。主演のディカプリオが島を捜査する連邦保安官を演じ、『帰らない日々』のマーク・ラファロ、『ガンジー』のベン・キングズレーが共演。次々に浮かび上がる謎や、不気味な世界観から目が離せない。
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あらすじ
精神を病んだ犯罪者の収容施設がある孤島、シャッター アイランド。厳重に管理された施設から、一人の女性患者が謎のメッセージを残して姿を消す。孤島で起きた不可解な失踪(しっそう)事件の担当になった連邦保安官のテディ・ダニエルズ(レオナルド・ディカプリオ)は、この孤島の怪しさに気付き始める……。
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映画レポート

「シャッターアイランド」スリラー映画の巨匠たちへのスコセッシ流ラブレター
マーティン・スコセッシ監督作品としては映画史的にさして重要な作品ではないが、何度でも見たくなる「媚薬のような映画」だ。ヒッチコックやキューブリックといったこの手のジャンル映画を手がけた偉大な映画作家たちへのラブレターともいえようか。
スリラー映画の王道ともいうべき映画技法がてんこ盛りで、とくに黄金期のヒッチコック映画へのオマージュがプンプンと匂う。導入部のフェリーのシークエンスなんてスクリーンプロセスだし、フェリーが島に到着するとけたたましく高鳴る音楽がバーナード・ハーマン風だったりする。劇中、稲妻の閃光が主人公の顔を断続的に照らす場面なんてまるで「裏窓」のストロボライトのように感じる。
物語設定が1954年であり、「赤狩り」や「洗脳」が重要なキーワードになっていて、ヒッチコック映画でいう「マクガフィン」(実体が登場しない「ほのめかし」)として実に効いている。
嵐により外界から閉ざされた孤島。そこに立つ精神病院は、キューブリック映画「シャイニング」の山頂のホテルのように、幻想や悪夢が次から次へと登場する戦慄の主舞台となる。レオナルド・ディカプリオは「アビエイター」の神経症的演技をさらに増幅させて、狂気におちていく主人公を「怪演」している。
全編がフェイク・ストーリーであるかのようにほのめかすラストが苦く、深い余韻を残す。冒頭から巧妙に仕掛けられたギミックの数々が謎解きの世界への道案内となる、そんな悪夢的作品なのだ。(サトウムツオ)
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2010年4月8日 更新