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ウルルの森の物語
2009年12月19日公開

ウルルの森の物語

1192009年12月19日公開

shi********

4.0

二番煎じと侮るなかれ!!!

子供と動物を使った商業主義映画と侮っていると、お子様連れのお父さんお母さんは思わぬ涙を流すことになるかもしれないので気をつけた方がいい。 正直言って「どーせ森に帰してさよーならーでおしまいなんだろ?」と斜め目線で観に行ったが、涙を流すことになるとは思わなかった。 欠点や違和感はいくつかある。 特に前半に気になるのが子供のセリフ。 「わぁあ」「すごぉーい」「○○ぉーい」「○○ぁーい」ととにかく大げさで一辺倒。 子供の純粋な感嘆をバカな大人がセリフにすると、こうも薄っぺらくなるかという典型。 子役の魅力半減である。 そんな駄作色ぷんぷんの作品を良作に変えたのはこの3人。 北村沙羅ちゃんと大滝秀治と、これが劇場映画初監督の長沼誠である。 まずは北村沙羅ちゃん。 演技力と可愛らしさは水準以上。 違和感のあったセリフをはねのけるような表情を徐々に見せていく。 本当に動物が好きなんだな、ということが良くわかる。 この表情を引き出した監督に拍手。 深田恭子よりはるかに演技力も上だ。 これからクライマックスという時に「じゃ、これで」と深田恭子を退場させたことも監督に喝采だ。 沙羅ちゃん演じるしずくの「お母さんに会いたい!!」という想い。 これだけで大人の欲も事情も全て吹き飛んでしまう説得力、奇跡が起こっても許せる説得力がある。 そして名優・大滝秀治。 この人の存在なくしてこの映画は語れない。 出番は少ないが圧倒的な存在感だ。 「甘っちょろいことしてるんじゃない!!!」 大滝秀治演じるマタギ老人の登場のシーン。 この一喝はこの映画を製作している者にぶつけたものに思えてならない。 作る側も観る側も、これで引き締まる。 「マリと子犬」の二番煎じにはさせない、という監督の叫びにも聞こえる。 「ぼくたちがしてることは、正しいことなのでしょうか」 兄すばるが老人に問う場面。 老人の答えは当たり前の内容なのだが、ここで涙があふれてしまった。 この「ぼくたち」とは我々人間全てなのだ。 野生動物と関わることなどめったにない。 だがペットにしても動物と関わることとはどういうことなのか、どういう覚悟が必要なのか、人間は改めて考えなければならない。 本作は恐らく「マリと子犬」の二匹目のどじょうを狙って安易に企画された物だろう。 だがそうはさせないという監督の「抵抗」が随所に見られる。 この種の「抵抗」は観光商業映画として企画されたであろう「アマルフィ」でも見られた。 安易な企画に抵抗できなかった「スノープリンス」とは大違いだ。 残念ながら本作は二番煎じ企画と多くの人に見抜かれてしまったようで、それが興行成績に表れている。 だがこんな「抵抗」をする「映画に対する良心」を持つ「映画屋」がいるのだから、まだまだ日本映画は見限れない。

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