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銀色の雨 (2009)

監督
鈴井貴之
  • みたいムービー 67
  • みたログ 142

3.40 / 評価:60件

人生の雨宿りを優しく描くも、脚色不良

  • Kurosawapapa さん
  • 2010年2月16日 8時30分
  • 閲覧数 1073
  • 役立ち度 28
    • 総合評価
    • ★★★★★

本作の原作は、浅田次郎の40ページほどの短編「銀色の雨」。

家出した高校生を中心に、心に傷を負っている男女3人が出会って肩を寄せ合い、やがて新たな一歩を踏み出すまでを描いた作品です。


この映画は、原作とはかなり違う設定になっています。

この映画の主人公和也(賀来賢人)は、父親を亡くしていますが、
原作では、健在の両親に捨てられた設定。

その後、
菊枝(前田亜季)と章次(中村獅童)の3人で奇妙な共同生活が始まるのは、原作も同じですが、
原作の和也は、家出をしてヤクザの世界に紛れ込んだ形。


章次もボクサーではなく、拳銃を持ったヤクザで指名手配中の身。
菊枝も情に厚いのですが “極道の妻” 的存在です。

それゆえ、本作にあった性的関係も、原作ではよりリアル。

映画では、若い菊枝が男性と次々と関係を持っていくことに、
少々違和感を感じてしまいました。




原作の和也は、
腹を割って自分に接してくれる章次を慕うようになり、
章次の義理を通す実直さを感じながら、今までの自分と決別していきます。

自分が屈折した人生を歩んだのは、
自身の境遇のせいではなく、甘えた心にあったことに気付くのです。

原作は、短編でありながら、
繊細な心情が伝わるドラマとして、実に内容の濃い作品になっています。




本作で、まず疑問を感じたのは、
前半に多く取り入れたコミカルなシーン。
このような笑いのシーンは、もちろん原作にはありません。

・章次がクマの傘をさしたり
・和也が色気づいて、コロンを体中にかけまくったり
・デパートで、服を試着できない太った女性が登場したり

なぜ哀しみと切なさを謳い上げるドラマに、コミカルなシーンをこれほど挿入したのか、
少々理解に苦しむところ。



また、原作は短編ですので、当然映画では枝葉をつけるわけですが、

・和也の屈折した態度と、浮かれるシーンのギャップ
・元友人が章次を恨む理由が浅慮で、態度を改める心境変化も不明
・雨が降る場面で「地球が泣いている」と繰り返すのもチープ

どうも枝葉の伸ばし方が、いびつでした。




重苦しい雨は、ずっと続くものではなく、
いずれは晴れがやってくる。

「銀色の雨」とは、虹を生み出し、光を導く雨。

後半明らかになる、和也と章次の秘密の関係は、原作には無い部分で、
この点については、見事な脚色。

和也の成長を、悲哀に満ちた人間関係からアプローチしていくところは、とても良かったのですが、
作品の不調和は、否めませんでした。




本作のラストは、とても爽やか。
エンディングでは、徳永英明の「透徹の空」が流れます。

歌詞の一節。

「私は いつでも あなたを見上げていた
 ときには叱り 正してくれた あなたは透徹の空」

いかにも原作を意識したような詞です。

歌は、素晴らしかったのですが、
本作における章次は、和也の「透徹の空」には、
いまひとつ、なっていないような印象でした。

☆3つといったところでしょうか。

詳細評価

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音楽

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