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半分の月がのぼる空
2010年4月3日公開

半分の月がのぼる空

1122010年4月3日公開

yan********

4.0

ネタバレ巧みな演出をありがとうございました

2010年の作品なのにブラウン管テレビ?、ケータイも登場しない?、ほとんどやっつけのような学校での劇のシーン?、砲台山に二人でバイクで行った際に、里香のケガした足が何かで早々に止血されている?、そしてあっという間に助けが来たり?、どうしてこんなに古臭くって、雑な作りなんだと冒頭から作品選びに失敗した感で嫌になりそうな展開が続きました。それが、まさかそれらのほぼ全てが大泉洋さん演じる内科医・夏目の回想シーンだったとは思いもよりませんでした。若き日の想い出ですから、厳密できっかりとしているはずもなく、都合よく時間が長短され、綺麗に美化されている、そう考えればやっつけだとしか思えず極めて退屈だったあのシーン、このシーンが違って見えてきました。 途中までは、難病と闘う少女と彼女と出会った少年の物語とばかり思っていましたが、全く違いました。思えばそれらのシーンは、ずっと裕一視点でした。 一方で、大泉洋さん演じる内科医・夏目は冒頭からなよなよと後ろ向きな姿勢ばかりが目立ちこれはこれでイライラさせられました。また、こういう演技も大泉洋さんはとてもはまり役、だからこそ最後のキリッとした旅立ちが活きてきます。作品は、大人になって最新の医療技術をもってしても立ち向かえない現実があることを知り、かつての自分と同じような境遇になる少年に難病を抱える彼女と別れるように説得するシーンを経て、でもそれでも里香との想い出から力を得て再び立ち上がろうとするところで終わりますが、大泉洋さんの名演もあってとても説得力をもって描かれていると思いました。 妻の命を救えなかったことから自信を失い、生きる意味をも見失っていた大泉洋さん演じる元心臓外科医が過去を改めて振り返ることで、想い出の中から勇気をもらって再び心臓外科医としての道を歩みはじめるまでの物語。 「君の膵臓をたべたい」や「世界の中心で、愛をさけぶ」など過去を振り返り、それを起点に主人公が再び前を向いて人生を歩み始めるという作品は他にもありますが、それらが過去を振り返っていることが最初から明らかな一方で、この作品では最後の最後までそれが巧みな演出によって隠されている、この点が大きく違っていました。時間軸を見事にコントロールした巧みな演出のお陰ですっかり騙されてしまいました。このような構成の作品は初めてでした。それもあって画面の前で大泣きしてしまいました。 素敵な作品をありがとうございました。

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