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渇き (2009)

THIRST

監督
パク・チャヌク
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3.29 / 評価:333件

タイトルと逆の 韓国映画らしい“湿度”

  • バツイチ王子 さん
  • 2010年2月25日 21時28分
  • 閲覧数 1245
  • 役立ち度 42
    • 総合評価
    • ★★★★★

「殺人の追憶」 「JFA」 「チェイサー」
そんな印象深い韓国映画を思い出した
暗めの画に濃密な空気と蒸し暑さが同居し
狂おしい人間の業が発する熱っぽい芳香をまとう“湿度”

「渇き」というタイトルに反し
感じられたのはそれと質が同じ“湿度”だった



そんな前半は情念渦巻くとっても演歌なイメージ
しかし後半は触れたことのない民族音楽へと様変わり

掴みどころのない自由なストーリーは
ちょっと前衛的で映画というより演劇的

失楽園+吸血鬼=切ないホラー 
そんな安易な先入観とは違う展開が待っていた
面白いのだけれど、圧し掛かるような重さはない
敢えて笑いをちりばめて
エロ・グロ・インモラル満載の重い話を軽く仕上げる

心に残らない反面、軽く楽しめるから
先入観に縛られず 流れに任せて楽しむがいい
予測は裏切られても、なかなか楽しませてくれる作品ではある



人体実験により吸血鬼となった神父のサンヒョン
姑に虐げられた友人の妻テジュと出会い恋に落ちる
禁断の関係とも言うべき二人の行方を描いている

若いクセに所帯臭くて小汚くてくらい女 テジュ
およそ性的対象になりにくい見かけに反し
強く放たれるこの女性の妖しい芳香はなんなんだろうか?
古きポルノ映画のようなAVには出せないじめっとした空気感
思わずノドの「渇き」を覚えた

演じるキム・オクビンは初見だが
童顔にしてエロティック、清楚にして大胆
そのギャップに、非道徳的さがより煽られる


また、敬虔なはずの神父が理性で己を制御できないツラさ
どうしても隠せずにじみ出る 背徳と道徳の二面性
狙いはわかるが、暗い画も手伝ってややその葛藤が見えにくい
だが、それが逆に何を考えているかわからない気持ち悪さも産んでいる

サンヒョン演じるソン・ガンホ
10kgも減量して本作に挑んだそうで
その大きい顔は、いつもより少し小さく見えた
しかし、もともと健康的な風体なため
バンパイアの得体の知れない恐ろしさや鬼気迫る感じはしない
贅沢言えば、彼が荒れ狂ったような演出が個人的には見たかった



そんな、二人の禁断の愛はなかなか
心理学的に言うと「渇き」 は欲求不満の現象だそうで
吸血鬼が血を吸いそれを癒すことは性行為へのメタファーとして描かれる
神父なのに、人妻なのに 「渇き」 に苦しみ求めずにはいられない

「渇き」を癒す=イケナイコト

イケナイコトほど甘美なものはないかもしれない
それを人間は理性で抑えているだけだ
しかし、一旦外された箍は、さらなる「渇き」を誘発する
その癒しの形は様々であり、周囲の理解を伴わず目には見えない
だが、当人達がそれを意識することで確かにそれは存在する

いろんな映画で散々描かれたテーマではあれど
人間の根幹を成す部分だけに見ごたえ十分


戻れなくても もういいの
くらくら燃える 地を這って
あなたと越えたい 天城越え  ~「天城越え」より

この演歌が脳内に流れ、その中で綴られる情念がピタリと映画にハマる
生きていく地獄から死によって開放され、また地獄へと堕ちる
終わることのない「渇き」
それは人間の業の深さに他ならない

うん、葛藤の可視化はやっぱり面白い


しかし、その後の展開はドタバタ感有り、ホラーコメディであり
どう捉えたものか、戸惑ってしまったのが正直なところ
前衛的な劇を見た結果、不思議な感覚に支配され
何と言うか暑さにやられてボーっとのぼせあがった様な気分

いろんな映画祭でも賞を取ったそうだけど
突拍子もない部分が多く一般ウケしないような気がする
前半部分のノリで最後まで描くとありきたりではあるが
怪物になった人間と人妻の普遍的な愛の映画たりえただろう

よく言えば、芸術性が高いといえるが、
後半部分のおかげで、不思議な映画だったなと思ってしまった


韓国映画らしい泥臭くもスタイリッシュな映画
なんだかんだ言いながら、しっかり楽しめたのは間違いない      1900円

詳細評価

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