だめだ、ついてゆけない。
- とみいじょん さん
- 4級
- 2020年7月24日 1時47分
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- 役立ち度 1
- 総合評価
一歩間違えれば三流映画にもなりかねないが、受賞するような映画に仕上がっているのは、役者×演出×映像の力。
特に、ガンウを巡る心象風景ともいえる、ガンウとテジュの夫婦の寝室での、サンヒョンとテジュのまぐわいシーン。これほどまでに、怖くて不気味で滑稽なシーンを見たことがない。
マザコンのヘタレ男として登場したガンウ。演じるハギン氏がすごい。
後半、眼だけで演技するラ夫人を演じるヘスクさんの存在感。
あの、殺戮乱闘の中、床に転がされているラ夫人の眼差し。封印していた良心を揺さぶり起こされてしまうあの一瞬。
そしてサンヒョンとテジュの行く末を見つめる眼差し。
この目があるのとないのとでは、物語における緊張や、いろいろな意味づけ(ここは映画の中では明確に語られていないので、鑑賞者がかってに想像するしかないが)が、多重的になる。
失笑気味のワイヤーアクションはさておき。
テジュも、同情を誘う女から、後半、1、2歳児のような言動とともに生々しく露骨な大人の女のいやらしさを振りまいてくれる。
サンヒョンも激しい。思慮深いようなふりを見せるが、結局、短絡的にその場その場の欲求を満たしてしまう。
信者へのふるまいも、己のことしか考えていない。どうせ彼らの前からいなくなるのなら、心のよりどころを奪うことはないのに。勝手に理想化されて荷が重いのはわかるけれど、その理想化をあんな形で撃ち砕かれた心の傷には思いやれない。
色彩等の映像も見事。
なんて映画だ。
演出や映像、役者の、職人芸的技の複合芸術と、私が好きな要素はたくさんあるのだけれど…。
とはいえ、
他人を利用してでも叶えてしまう”望み”。『悲しみよりもっと悲しい物語』といい、『母なる証明』と同じ。
養い子に対するあの仕打ち。”犬”といって憚らないことが、まだまかり通るのか。「子犬のように育てた」というのは、大事に育てたといいたいのか?
サンヒョンを退院させ、その後の経過観察をしないで、責任を取らない機関。
脚本のミスなのか、韓国では”当たり前”なのかわからないけれど、こんなところが受けつけない。
私は韓国と相性が合わないのかもしれない。
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