秘密と嘘
- yab***** さん
- 2019年10月11日 20時36分
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「私は貴方には嘘をつかない 人間は100守りたいものに嘘をつくの」
主人公の妻は浮気相手の男に言う。嘘をつく相手は、もちろん夫。
「秘密ってある?」 「あるわよ」
夫はベットで妻に問いかけ、妻ははっきりと答える。
秘密と嘘。夫婦それぞれの不倫
妻は自分の趣味であるテディベアを譲ってほしいと言ってきた男と。
夫は大学時代のダイビングサークルの後輩と。
お互いの夫婦生活は、会話がほとんどなく、セックスレス。夫は部屋に鍵をかけヘッドホンでテレビゲーム。
夫と妻は部屋の中でも携帯で会話。
こういう夫婦って増えているんだろうね。傷つけ合うことを怖れ、お互い向き合って自我をぶつけ合うことを避け、秘密と嘘(かの不倫でお騒がせの麻木久仁子は”優しい嘘”と言ってたっけ)で、何事もなかったように毎日をやり過ごす。
そして、不気味なバランス感覚で、夫婦生活を持続させている。
自分本位だとか、卑怯だとか、不純だとか言い放つことは簡単だろう。
しかし、危なっかしい均衡の中で、秘密と嘘なるものが、確実に夫婦の永続的な共棲を約束させていることも事実である。皮肉としか言いようがないが。
妻の愛人の別れた彼女は、妻にテディベアを返しながら言う。
「寂しいのは自分だけだと思わないで」
他人は絶対傷つけない、と思っていても、そうはいかない現実。
彼女に嘘をつけなかった愛人に対して、妻は冒頭の言葉を言い放つ。
「先輩、黙ってればわからないから」
秘密と嘘をあくまで肯定する夫の後輩。
その後輩に紹介してもらったフランス料理の店に、結婚記念日に妻を連れて行く夫の愚かな企て。
この夫婦はこうして別れることなく、たまに夫婦っぽいことをしながら時のおもむくままに流されていく。
これも愛情のひとつの形と言うのなら、愛とはとても虫がよくて、ご都合主義で、お気軽なものに思えてしょうがない。
一抹の寂しさはあるが、仮に愛がその程度のものなら、とても説得力のある作品である。
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