ここから本文です

スイートリトルライズ (2010)

監督
矢崎仁司
  • みたいムービー 196
  • みたログ 659

3.33 / 評価:241件

解説

江國香織の同名ベストセラー小説を映画化した、美しくも切ない大人のラブストーリー。夫を大切に思いながらも、別の男性に恋をしてしまうヒロインの心情がつづられていく。監督は『ストロベリーショートケイクス』でも女心を巧みに描いた矢崎仁司。『嫌われ松子の一生』の中谷美紀がテディベア作家・瑠璃子を、その夫・聡を『ハゲタカ』の大森南朋が演じる。ヒロインの複雑かつ繊細(せんさい)な心情を、深い映像美とともに描き出した作品世界に注目だ。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

夫の聡(大森南朋)と結婚して3年になるテディベア作家の瑠璃子(中谷美紀)。日常に不満はないものの、人間の抱える根元的な寂しさにさいなまれる瑠璃子は、夫に向かい、「この家には恋が足りないと思うの」と自分の気持ちを伝えてしまう。そんな中、瑠璃子は自分の作ったベアを欲しがる青年・春夫(小林十市)と出会うが……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C)2009 江國香織/「スイートリトルライズ」製作委員会
(C)2009 江國香織/「スイートリトルライズ」製作委員会

「スイートリトルライズ」扉を開けるのには、「甘い小さな嘘」がありさえすればいい

 普段は意識しないのだが、気がつくと私たちの生活の場は扉だらけである。だから映画の中に数々の扉が出て来てもまったく不思議ではないのだが、この映画ではそれらの扉が何か妙に気になる。何しろ主人公の夫は帰宅後は自室に鍵をかけて引き蘢り、妻は夫に携帯で電話して用事を伝えるのである。

 しかし彼らは何かを閉ざしているわけはなく、当たり前のように扉は開閉され、そこを通る人間たちがふたつの異なる空間を繋いでいく。彼らはそうやって、いくつもの異なる時間と空間を無意識に旅しているようでもある。妻の不倫や夫の不倫は単なる不倫というよりも、現在の妻とかつての夫、現在の夫とかつての妻との新たな出会いとさえ呼べるような、不確かなねじれの中にあったように思う。たしか高台にある主人公たちのマンションの部屋から見晴らせる住宅街の風景の中には、それも当たり前のように古い墓地が広がっていた。主人公たちはその墓地の地下深くに眠るかつてそこに生きていた人々とも、扉を介して関わっていたのかもしれない。

 いや、人生とはそんなものなのだ。私たちは決して今ここにだけ生きているわけではない。目の前にはいくつもの扉があってその先には思わぬ世界が開けているのである。扉を開けるのには、「甘い小さな嘘」がありさえすればいい。そんな扉の向こう側からの囁きが、この映画からは聞こえてくる。(樋口泰人)

映画.com(外部リンク)

2010年3月11日 更新

本文はここま>
でです このページの先頭へ