ここから本文です

劔岳 撮影の記 標高3000メートル、激闘の873日 (2009)

監督
大澤嘉工
  • みたいムービー 64
  • みたログ 154

3.36 / 評価:75件

単なるメイキングフイルムではない。

  • 晴雨堂ミカエル さん
  • 2009年11月15日 15時36分
  • 閲覧数 368
  • 役立ち度 27
    • 総合評価
    • ★★★★★

 かなりの贔屓目があるのは認めるが、これ一本で邦画を代表する映画人たちの作品にかける真摯な姿勢を雄弁に描写したドキュメント映画の佳作である。
 
 本編の上映は今年(2009年)の初夏、半年ほど間をおいてのメイキング上映である。世間ではメイキングフィルムといえば本編のオマケ、DVD化する際の特典映像、あるいは本編上映やソフト販売の雰囲気を盛り上げるためのTVドキュメントとしての位置づけだ。しかし本作はこれだけで独立した作品になる。
 
 本編をご覧になった方ならお判りのように、CGや空撮は使用していない。米粒のように見える測量隊が残雪の上を移動したり、虫のように岩壁にはりついている様を広角や望遠だけで撮影しているのである。そして観客自身もその絵を観て映画スタッフたちも登山隊を演じている俳優たちと同様の厳しい環境で重い機材を使って撮っているのだ。(余談1)
 
 登山を経験された方ならお判りと思うが、健常者で体調万全であれば三千メートルを登ったぐらいで高山病にかかる事は滅多にない。しかし日常生活では気がつかない僅かな変調や衰えが高山で響く。冬の寒さも、仮に平地と同じ気温であっても高山ではかなり身に凍みる。
 
 通常の映画制作でも、監督を中心に撮影スケジュールの設定と撮影現場の確保、スタッフの配員や俳優との調整、機材備品の手配搬入など、いろいろ忙しい。仮に低予算で「十二人の怒れる男たち」のように一つの狭い会議室に撮影現場が固定されていてもだ。
 これが山岳という厳しい環境を舞台に映画づくりを行うと、通常の映画よりも段取りや組織力はもちろんのこと、監督以下各スタッフ・俳優たち個々の資質や実力が明るみになり発揮されていく。ドキュメントとしてのドラマ性が強くなるのだ。
 
 今はCGが使われていない映画を探すほうが大変な時代になってきた。CGのコストがこのまま下がっていけば、僅かなスタッフが狭いパソコンルームで見応えのある映画をつくることができるようになるだろうし、既にその時代だ。
 しかしかつてビートルズが野外コンサートをやめてスタジオに篭って名曲を発表するようになっても、やはり基本はスタジオから出て生で演奏するライブであり、それが視聴する人の心を強く捕らえるのと同じように、実写映画もアニメと同じくスタジオやパソコンルームに篭ってつくる時代だが、やはり本物の場所でロケーションをやり俳優の生の演技をスタッフが肉体労働で撮る絵の迫力が素敵だ。
 
 本作は本編のオマケ映像ではない。映画づくりにかけた監督・スタッフ・俳優ら映画人の気迫と、それら長期ロケを支えたスポンサーや地元支援者たちの映画に賭ける想いを記録した作品、映画づくりの原点を表した佳作である。
 私は本作はDVD特典映像やTVの特集番組にせず、独立した映画作品として上映した事に敬意を表する。
 
(余談1)CGを入れたら「釣りキチ三平」や「カムイ外伝」のような違和感ある絵になってしまうだろう。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 泣ける
  • ロマンチック
  • 勇敢
  • 知的
  • かっこいい
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ