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劔岳 撮影の記 標高3000メートル、激闘の873日 (2009)

監督
大澤嘉工
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3.36 / 評価:75件

メイキング映像なのに本編より面白いとは!

  • mas***** さん
  • 2009年11月15日 23時06分
  • 閲覧数 812
  • 役立ち度 34
    • 総合評価
    • ★★★★★

梅田ブルク7で初日に鑑賞。ほぼ満席でその殆どが中高齢者という特異な雰囲気の中での鑑賞となった。また映画の途中での私語がやたら多かったのも特徴的。

「剱岳 点の記」の撮影現場にフリーのディレクターである大澤監督が完全密着し、ロケ風景を克明に記録したドキュメンタリー。通常はメイキング映像として「点の記」DVD発売時のオマケ扱いとなるはずだが、さすが劇場公開するだけあって見ごたえ充分、木村大作監督には申し訳ないが、個人的には「点の記」よりこちらの方が面白く感じられた。

冒頭、木村監督が「点の記」の撮影開始に当たって「この映画のロケは、撮影ではない。苦行だ。」と述べているが、この作品を観ると正にその通りであると納得する。全ての撮影を一切のCG撮影を廃して実際に剱岳に登って行う、これは言うは易く行うは難しである。

撮影隊の基地は山麓にある登山小屋であり、監督を始め撮影スタッフと俳優が数週間に渡って寝泊りする。その間の日課は毎朝4時に山荘を出て、撮影スタッフは一人30キロを越す重い機材を担いで数時間歩き、撮影現場で機材を組み立てる。

俳優もスタッフと同様に徒歩で現場に向かい、到着後に撮影用の衣装に着替え、天候が良ければ何カットか撮って、その後また数時間かけて山荘に戻る。毎日の撮影現場までの移動自体が本格的な登山なのであり、鉄鎖のある難所を仲村トオルが命綱を頼りにヘッピリ腰で移動しているシーンには笑えた。

そして折角撮影場所に到着しても、天候が悪く、撮影に適していなければ、その日の数時間の歩きは無駄となり、何もせずに帰ることになる。機材等の組み立ては全員で行い、エキストラもいないなので、スタッフがエキストラ役を兼ねることになる。また監督の方針としてストーリーに沿って順撮りで撮ることにしているので、どこかで撮影が滞ると先に進めない。まさに苦行である。

この映画の中で、香川照之が度々コメントするシーンがあるのだが、これが傑作である。午前4時に出発して数時間後に、香川が「笑っちゃうよ。朝からひたすら歩いて、まだ撮影に入っていないんだぜ」とボヤく。その日は結局9時間歩いて午後1時に撮影現場に到着、2カットだけ撮ってまた9時間の道のりを歩いて戻ったとのこと。

また、日本山岳会のエリート役で、当時最新の登山道具を備えた仲村トオルの格好に、明治時代の案内人役の香川は「いいなあ、俺なんかこの雪の中で草鞋(ワラジ)だぜ。」と寒そうに足を見せる。また、浅野忠信に「剱岳の登頂に成功したら、山頂で監督を胴上げしてそのまま(崖から)落としちゃおう」と言って笑わせる。作品の中では朴訥とした案内人役であるが、そんな人柄と正反対の面白コメント連発で、まさにこの人、ムードメーカーである。

この映画の撮影がほぼ完成に近づいた時点で、撮影班の一人が落石により頭に重傷を負い、入院する事態が発生する。撮影隊は山を下りて、各々がこの作品の撮影を続けるべきかを考えたそうだ。結局10日後に撮影隊は山に戻って撮影を再開することになるのだが、このシーンでは荘厳な音楽(確かベートーヴェンのアレグレットだっけ)が流れる。メイキング映像の中でも深刻でドラマチックな場面が終盤に挿入されたことになり、不謹慎ながら出来すぎたエピソードだと感じてしまった。

最後に残った剱岳山頂での撮影が、一日目は苦労して山頂に登ったのに何と曇天で不可能、日を改めての二度目の登頂で漸く撮影完了、いやはや大変な撮影もあったものである。

これだけの苦労をして撮った映画が「点の記」となるのだが、雄大な風景は文句なしに素晴らしい。それだけに、ストーリーの弱さが目立ち、プロの脚本家に脚本を依頼しなかったのが惜しまれるわけで、ストーリーの面でも、メイキング映像に過ぎないこの「撮影の記」の方がむしろ出来が良いというのが何とも皮肉である。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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