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インビクタス/負けざる者たち (2009)

INVICTUS

監督
クリント・イーストウッド
  • みたいムービー 1,153
  • みたログ 5,575

4.12 / 評価:2,544件

不屈の魂が語る「赦し」

  • のんびりレオン さん
  • 2010年2月5日 18時24分
  • 閲覧数 800
  • 役立ち度 180
    • 総合評価
    • ★★★★★

これは二つの奇跡の物語
現実に起きた話だと言われなければ、
こんな理想主義のヒューマンな味付けと、
こんなベタなスポーツサクセス物語は、
あり得ないよ!
と言ってしまうだろう。

でも、これは真実の物語
どんなに打ちのめされても
どんなに目の前の道が険しくとも
屈しない魂(INVICTUS)を持つ限り
そこに希望は見いだせる!
そこに道は開ける!
ということをこの映画は示してくれる。


うーん この書き方だと、
ずいぶん自己啓発的な臭いがする道徳的映画
のように思わせてしまうなあ(笑)。
安心してください、それは誤解です。

物語の骨格は、
96年ラグビーワールドカップ(自国開催)という大舞台で
弱小だった南アヒリカチームが引き起こす奇跡にあります。

その奇跡たるや
事実とはいえ、ベタなスポ根物語も顔負けの劇的展開!

この題材であれば、幾らでも胸を熱くさせ、
涙を流させる演出はあるでしょう。
見る側の我々も、スポ根ものには自分なりの感動のツボがあるので
それをじっくりと演出してほしかったりもします。
しかし、イーストウッド監督はことさらに煽るような演出はしません。
これを物足りないと感じる人もいると思います。
私も、見終わった直後は、
奇跡に至る道のりをもう少し熱く語ってくれよ、
と思ったりもしました。

面白いもので、他の映画のレビューなどで
「ベタな演出だ」などと書く自分が、
スポーツものにはベタな展開を求めてしまったりします。
(高級料亭の薄めの味付けに、
自分が慣れている家庭の濃い味付けを求めるのに
似ていないでもない・・・)

振り返れば、あの演出で十分満足です。
あざとい演出は不要。
試合前の飛行機のエピソードや試合展開など、十分に劇的です。


このラグビーでの奇跡を引き起こす
もうひとつの奇跡と言ってよいものは、
マンデラが故国南アフリカのために選んだ道です。

危険人物として27年間の牢獄生活にあった
マンデラが選択したのは、
これまで南アフリカを支配してきた白人と
虐げられてきた黒人との融和。

マンデラは語りかけます。
怒りや憎しみを捨てて、「赦し」なさいと。
「赦す」ことこそが、自分の魂を解放して自由にするのだと。

たしかに、怒りと憎しみは
自らの心を蝕み、
自らを内側から焼き尽くす火のようなものです。

その憎しみによる報復が民族的な拡がりをもてば、
南アは内戦状態になり、果てしない流血の惨事が起き、
南アは復興のきっかけさえつかめなかっただろうことは
容易に想像できます。
(当時は、白人の軍隊が圧倒的な軍事力を有しており、
マンデラは軍の最高責任者の将軍を味方につけることに力
を注いだようです。)

彼の哲学は、夢想的なものではなく
現実の政治情勢を踏まえた冷静な智恵でもあったのです。

白人のラクビーチームを潰すのではなく、あえて残して
ワールドカップを利用して国民統合を実現しようとしたことも
その一つの現れです。


マンデラが閉じ込められた牢獄は、
手を左右に伸ばせば届くほどの狭さ。
そのような過酷な牢獄生活を27年間送ってきた人間が語る
「赦し」という言葉の重さに、心打たれます。

裕福な家に生まれたリーダーが、やたらと口にする
「友愛」という言葉の軽さ
とは大違いだな、と映画を見ながら思ってしまいました。


マンデラの選んだ道が正しかったことは、試合が進むにつれて
観客にも分かりやすく提示されます。
(シークレットサービスや、路上で警官のラジオを聴こうとする少年などなど)


「自分が自らの運命の支配者」になるためには、
外部からの苦難に屈しないだけでなく
怒りや憎しみで作られた心の牢獄に、自らが囚われないことも大切なのでしょう。
(とても難しいことですが)


イーストウッドは、
欲望や生存のために殺す役(マカロニウェスタン時代)
悪には真っ向から「力」で対抗する役(ダーティハリー)
を経て、
監督としては、アカデミー賞をとった「許されざる者」を始めとして
悪や憎しみの連鎖が止まるのか
人種偏見・人種差別は終わりを告げるのか
というテーマを問い続けてきたと言えます。

それに対する一つの境地が「グラントリノ」における自己犠牲でもありました。
本作は、そこで提示されていた「赦し」が一層深められていると思います。


次回作も、マット・デイモン主役で決まっているようです。

イーストウッド監督が描く作品を、リアルタイムに楽しめることは
大きな幸せです。

おりしも、今年はサッカーのワールドカップが南アフリカで開かれます。
スポーツが醸し出す一体感と力を再確認し、
南アフリカの国情と歴史を知るにも絶好なタイミングとなりました。
お薦めです。

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