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パリ20区、僕たちのクラス
2010年6月12日公開

パリ20区、僕たちのクラス

ENTRE LES MURS/THE CLASS

1282010年6月12日公開

kih********

4.0

遅れている日本の学校への警鐘

 パリの一角に、出身国も生い立ちも将来の夢も異なる移民(の子弟がほとんど)の中学校がある。始業ベルが鳴ってから、着席するまで15分間。帽子は脱がない。教師のちょっとした言い間違いを囃し立てる。そんな“問題あり”の「学級崩壊」状態に赴任して4年目になる国語教師フランソワの新学年が始まる。彼は、生徒たちに正しく美しいフランス語を教えようとしていた。しかし、生徒たちの環境を知ると、彼らとの何気ない対話の一つ一つが授業であり、真剣勝負ということが分かり、悩み、葛藤する。そこで『アンネの日記』を読ませた後に、自己紹介文を書かせる。反発する生徒たちも徐々に詳しく自分を分析して表現できるようになってくる…。という学園ものの映画。  「学園ドラマ」といっても、日本の学園ドラマとは少々趣きが違う。異民族混住社会での教育の混迷、そこでの民主的な学校運営の困難、母国語(母国文化)の主体性と共存の危うさ、等々、表面的に整然と進んでいるかに見える日本の教師からは驚きの連続である。やがて(実は既に)我が国にも同じことが展開されることになる緊張感が日本の教師にどの程度あるのだろうか、と心許ない感を禁じ得ない。ひと頃の熱血先生の熱と血でどうにかなるような社会ではなくなる(なっている)からだ。生徒の問題行動に関する懲罰委員会に委員の教師だけではなく、親の代表や生徒代表までが参加し、結果としては全生徒・全住民にまで公開されるのだ。そういう手続きを回避するかのように、「自主」退学させてしまう我が国とはおよそ別の世界だ。  良いか悪いかの判断は別にして、我が国の対応は目がくらむほど遅れている。

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