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プレシャス (2009)

PRECIOUS: BASED ON THE NOVEL PUSH BY SAPPHIRE/PRECIOUS

監督
リー・ダニエルズ
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3.58 / 評価:628件

解説

ハーレムを舞台に、過酷な運命を生きる16歳のアフリカ系アメリカ人少女、クレアリース“プレシャス”ジョーンズの人生を描く人間ドラマ。サンダンス映画祭でグランプリを受賞したほか、各映画賞の目玉的存在となっている。新星ガボレイ・シディベが悲惨な家庭環境で育った主人公プレシャスを熱演。マライア・キャリー、レニー・クラヴィッツら、有名スターの助演も話題を呼んでいる。全米公開時には口コミで評判となった、力強く感動的なストーリーに注目だ。

シネマトゥデイ (外部リンク)

あらすじ

実父と義理の父によって妊娠を2度させられ、母親(モニーク)からは精神的にも肉体的にも虐待を受ける16歳の少女プレシャス(ガボレイ・シディベ)。悲惨な家庭環境に生きる彼女は、学校の先生や友達、ソーシャルワーカー(マライア・キャリー)らの助けを借り、最悪の状況から抜け出そうとするが……。

シネマトゥデイ (外部リンク)

映画レポート

(C) PUSH PICTURES, LLC
(C) PUSH PICTURES, LLC

「プレシャス」牢獄だった肉体が豊かな沈黙体に。引き技と引き技の融合が眼を奪う

 「プレシャス」の主人公プレシャス(ガボリー・シディベ)は異様に太っている。プレシャスは読み書きができない。プレシャスは実父にレイプされて2度も妊娠した。プレシャスは実母に激しく憎まれている。

 反則か、と私は思わずつぶやいた。これだけ負の要素が詰まっていたら、ちょっとやそっとでは冷たい顔はできない。いや、反則かとつぶやくことさえ嫌味に響くのではないか。

 が、「プレシャス」は、思わずシニカルになりかけた観客に眼くばせを送る。おいおい、ここでシニカルになるのは単純すぎないか、という眼くばせ。

 なにしろ、通常ならば楯になってくれるはずの母親(モニーク)が鬼よりもむごい存在だ。母親は徹頭徹尾プレシャスにつらく当たる。責めて責め抜く背後には、夫を実の娘に奪われたという最悪の嫉妬が横たわっている。モニークの一貫した押し技も見ものだ。

 するとプレシャスは引き技で応える。怒りや悲しみを分厚い肉に埋没させる一方、黙々と学び、黙々と前進して、こびりついていた不幸を少しずつ過去のものとしていくのだ。

 いいかえれば彼女は、牢獄だった巨大な肉体を不思議なブラックホールへと変える。そう、あらゆる負の要素を吸収しつつ、他者をゆるやかに惹きつけていく豊かな沈黙体。教師(ポーラ・パットン)やソーシャルワーカー(マライア・キャリー)の好意がプレシャスの沈黙と響き合う過程には、冷笑ではとらえきれない陰翳が宿っている。その背後には、引き技を思わせるシディベの演技がある。パットンやキャリーの引き技もある。押し技と引き技のこすれ合いも眼を奪うが、引き技と引き技の融合こそ「プレシャス」の見どころだ。私は、話の筋よりも女優たちの演技が化学変化する様子にすっかり見入ってしまった。(芝山幹郎)

映画.com(外部リンク)

2010年4月22日 更新

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