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すべて彼女のために
2010年2月27日公開

すべて彼女のために

POUR ELLE/ANYTHING FOR HER

962010年2月27日公開

ryo********

3.0

私には無い倫理観

無実の罪で投獄された妻(と子供)のため、平凡に生きてきた夫が全てを投げうってまで何かを成し遂げる様子を描いた作品っていうんだが・・・これだけじゃあほぼ全く内容には触れられないよなぁ。何をするのかは作品の比較的冒頭には判ってしまうんだけど、これがねェ・・・ある意味予想を裏切って驚くとはいえ、素直に受け入られるような事じゃあないんだよねェ。 とりあえず演技等は皆素晴らしかった。主演のヴァンサン・ランドンはとても普通には見えない男前的色香を醸し出していたものの、意志の強さと人としての弱さを上手く棲み分け演じていてた。「イングロリアス・バスターズ」のダイアン・クルーガーは、絶望的状況に陥る主婦を弱々しくも時には強く演じ、「イングロリアス・・」とは全く違う雰囲気を作り上げていている。 サスペンスとしての緊張感はそこそこあり、その醍醐味はまあまあ味わえるのだが、そこに至る経緯にいまひとつ説得力が足りず、緊張感をあまり持続できなかったのは残念だった。時折「なるほど!」と唸る個所もあるが、大体において使い古された盛り上げ方をしてしまっているのだ。本質的に疑問のある作品なのだから、そこは特に気を使って表現するべきだろう。 後はもう書く事も無いかなぁ・・・。 ・・・ネタばれしちゃうけど書いちゃいますか! という事でここから先は物語の核心に迫る処まで書くので、作品を観ていない人は気を付けて下さい。「別に観ないからいいよ!」って人とか、「ネタバレしたってヘッチャラさ!」って人などはどうぞ。 この作品の概要を聞いて誰もが想像するのは”夫が真犯人を見付ける”これだろう。だがこの作品は何を思ったのか、”夫は妻を脱獄させ、家族で海外へ逃げちゃおう”っていうのだ。・・・ビックリでしょ? まあ意外性があっていいのかな?とも一瞬思ったが、そのやり口が国語の教師にはあるまじき非人道的なやり方(お前が捕まれよ的な)であり、どうしても味方してあげる事ができなかった。ましてや人の犠牲の上に成り立つ幸せなどあっていい筈は無く、もし現実に(現実味が無くとも)同じような事が行われたとしても、身勝手な人間のする事だからと割り切れもするが、さすがに映画で見せる事じゃあないだろうと思うのだ。 当然作品の中でこの家族は肯定され描かれている。むしろ真犯人を見付けられない警察の無能さを嘲笑っているかのようだった。それは終盤脱獄されてしまったときの警察の慌てふためく姿からも想像できるだろう。逃亡生活の地獄など想像もできないが、それでも”逃げおせた”が作品最大の爽快感として描かれてしまうのは大問題ではないだろうか? 私の倫理感が間違っているのか、人間味ある表現という意味で映画だからアリなのか私には見当も付かないが、私はダメだったなぁこの作品。作品の質はむしろ高いと云えるのに、描く本質そのものが受け入られないってのは非常に珍しい経験だったよ。ポール・ハギスがリメイクしたいって名乗り出てるらしいけど、・・・できれば変えてね?

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