レビュー一覧に戻る
すべて彼女のために
2010年2月27日公開

すべて彼女のために

POUR ELLE/ANYTHING FOR HER

962010年2月27日公開

twb********

5.0

ネタバレこの愛、ハンパない。

あの名脚本家であり、名監督でもあるポール・ハギスがハリウッドで初のリメイクに挑戦するという。 その原作がこの『すべて彼女のために』というフランス製映画。 夫が愛する妻を救い出す、一種のラブストーリーだ。 平凡な教師のジュリアンと編集者のリザはひとり息子と3人暮らし。 毎朝リザが3人の写真を撮るのが日課。ジュリアンがいつまで続けるのかと聞くと 「息子が成人するまで」と答える。 まさか、この直後にこの答えが叶わなくなるとは知らずに…。 そう、リザが殺人罪で逮捕されたのだ。 映画には極限状態に愛する家族のために主人公が奮闘するものが様々ある。 『96時間』では愛する娘を人身売買業者から救い出すため元CIAの父が拳銃片手に娘を探す。 『母なる証明』では愛する息子が殺人の罪で囚われた母親が真犯人探しをする。 そして、この『すべて彼女のために』では無実の罪の愛する妻のため、夫は脱獄を計画する。 そんな風に愛の大きさはは極限状態に試されるのかもしれない。 この映画の主人公・ジュリアンのリザに対する愛の大きさはハンパない。 何だって、自分に対するリスクを負ってでも彼女を助け出すのだから。 まさに「すべて彼女のため」。 原題は『Pour Elle』。英語で言うところの「For Her」だ。 多分一番彼がつらかった for her は家族と別れることだと思う。 彼はリザの脱獄を計画した当初、7回脱獄した男から脱獄の必勝法を聞く。 そこで、その男の助言にこういうものがあった。 「家族には会いに行くな」 大抵、脱獄した者は家族や恋人、友人にまず会いに行く。そこでまた警察に捕まるらしい。 彼の場合、自分を育ててきた両親。 もうしわくちゃの老人の2人を祖国に置いて、一生会えないのはとてもつらいことだ。 特に父とは何が原因かははっきりされていないが、確執があり、長らく口も利いてないらしい。 そんな父は彼の異変にどことなく気づき始めたとき、「大丈夫か?」とジュリアンに一言声をかける そのとき、ふとしたことから彼の計画と脱獄後の行き先を知る。 しかし、父はそのことは何も触れず、ジュリアンとの最後のとき深く抱き合う。 その男同士の抱きあいが、角質はあってもやはり家族の絆はハンパないと教えてくれる。 そんな絆深き家族との別れに皆涙するだろう。 そう、脱獄を伝授した男のが言うように 「犯罪者には簡単にはなれない」のだ。 そして、終にそのときがきた。 脱獄を実行するときだ。 この脱獄シーンがとても刺激的。脚本が上手いと感じる。さすがはポール・はギスがほれ込むほど。 ジュリアンとリザ、警察子の2組を軸に動き、 エレベーターで鉢合わせしたときにジュリアンの銃には時間がなく玉が入っていない状況で警官たちに銃を向けることになる。 こういう、時間との戦いから生まれる興奮を与えてくれるのも面白い。 そして、人ごみの中逃げる2人と追う警官。 この2組の配置が観客には分からないので、彼らが近くにいるのか遠くいるのかも分からず、「分からない」ゆえの興奮を与える。 そして、ジュリアンの計画も用意周到。 ある時彼は相乗りサイトに登録する。これはそのとき何故だか分からない。 しかし、いざ実行のとき、警察は指名手配で「夫婦と1人息子」という形で手配する。 しかし、ジュリアンは相乗りによって5人家族に見せ掛け、検問をあっけなく通過。 こういう、裏の裏をかいたような計画が面白い。 他にも面白い技術は沢山あるのだが、全部紹介したらきりがない…。 それぐらいこの脱獄のシーンは面白い。 そして、ラスト、彼らは新たな人生をはじめる。 新たな自分として。 「脱獄は簡単だ。その後の人生が大変だ。」 その言葉で映画は幕を閉じる。 彼らはその後どう生きていくかは私たちは知らない。 しかし、その道のりが大変であるだろう。 そのとき大切になるもの。 それがまさに「愛」である。 祖国に置いてきた家族との間にあった愛の絆の様に深く深くお互いを信じ、想っていれば、どんな過酷な道も乗り越えていけるだろう。 この映画のテーマは「愛」。 あなたは愛する人のためにどこまでできるだろうか? 脚本もさることながら、配役も素晴らしい。 主人公のジュリアン演じるヴァンサン・ランドンは顔はしわくちゃで、ダンディズムを感じる風貌。 いかにも硬派イメージでジュリアンにフィットする。 リザ役のダイアン・クルーガーは『ハンティング・パーティ』で知ったがその美しさで観客のリザに対する不憫さを大きくさせる。 真犯人探しなど、もっと物語を深く面白くしてほしいが、個人的には好きな映画。 短時間でまとめ上げているのが良い。

閲覧数359