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第9地区
2010年4月10日公開

第9地区

DISTRICT 9

PG121112010年4月10日公開

p_h********

5.0

今でもどこかに存在している第10地区

衝撃的な映画を目撃した。 ・・・鑑賞したなどという言葉ではこの気持を表現できない。そう、目撃してきたのだ。 甲殻類の姿をしたエイリアンが隔離されて共存する世界。宇宙船が飛来してから28年も経過した南アフリカが舞台だ。 超絶的な科学力を誇るのに、何故か知能が低く武器さえ使えない多くのエイリアンは「エビ」と蔑称されて厄介者になっていた。この設定が先ず衝撃的である。 女王蟻と働き蟻。互いに組み合って犠牲になり橋を作ってまで行進を続ける兵隊蟻を連想せざるを得ない。一部の指導層のエイリアンはどうしたのだろう?見ている誰だって想像力を刺激されるに違いない。 さらに主人公のヴィカスの人物造形が驚きだ。 権力者の娘婿でいわゆる「マスオさん」ってヤツである。小心者で機転が利かず、誠実だけが長所という設定なのだ。重大な任務に舞い上がって、見ているこっちは、危なっかしくて仕方ないのである。 ・・・なんでこんな愚かなヤツが主人公なんだよ。 最初は不満を覚えた。しかし、次第に、この人物造形は必須の要件だったことに気付くのだ。 彼の最大の特徴・・・それは「普通の人間であること」 目先の誘惑に負け、大切なことを見失い勝ちな人間。小さな自己に満足し広い視野を持てない人間。 そういう主人公が、この映画には必要だったことが見終わると納得する。 圧倒的な世界観を持つカオスに放り込まれた目撃者は、リアルな映像と予測不可能な展開に翻弄され続けることになる。 主人公がもっと思慮深く意思の強固なヒーローであれば、この映画の持つエネルギーは半減し平凡な作品になっていただろう。 人類という名前の生物の資質を象徴する主人公は、異質な存在を許容しうるようになるのか? 人類は世界に遍満する差別や戦争を終らせることなど出来ないのだろうか? ヴィカスは目撃者ひとりひとりの鏡なのだ。 その圧倒的なメタファーを背景に展開する息も付かせぬアクション・・・そこが、この映画を更に凄いと感じさせる部分だ。 エンタメ性と社会性や思弁性をここまで全て高めさせた映画を私は知らない。 私が生涯でNO1の映画としている「ブレードランナー」の地位を脅かす可能性さえ、感じのだ。 何故、彼らは地球に来たのか? この後、どうなってゆくのか? この映画を、感動を共有した人と語りたい・・・こんな気持になったのは、本当に久し振りだった。 ハート・ロッカーもアバターも、この映画の前では形無しである。 今でも、どこかに存在している第10地区・・・メタファーとしても、実際のエビたちの居住地区としても、確かに存在している・・・!? 願わくは、ターミネーターに対するターミネータ2レベルの続編が考え付くまで、安易な続編を断じて作って欲しくないぁ。 この映画を作った関係者に最大級の感謝と尊敬の気持を捧げます。

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